ウェイブファンクションがSPARTAN学生版を来春正式発売

10本で32万円の低価格を設定、オランダの高校で実績広がる

 2003.09.09−ウェイブファンクションは、分子軌道法をベースにした分子設計支援システム「SPARTAN」(商品名)の学生向けバージョンを正式に製品化し、来年春から国内で本格的に販売開始する。教育機関を対象にしており、ソフト価格は10本で32万円。マニュアルも完全に日本語化、学生でも直感的に操作できるのが特徴だという。近年、コンピューターケミストリーシステム(CCS)を教育用に導入することが注目されており、いくつかの先進事例でも高い教育効果が確認されている。ただ、もともとは企業が研究ツールとして使用していたもので、教育用としては高機能すぎて高価だという問題もあった。教育分野で高いシェアを持つSPARTANに初の学生版が登場したことで、今後の市場拡大が期待される。

 SPARTAN学生版は、すでにオランダで実績があり、昨年の新学期からオランダ国内の2つの高等学校で、400名以上の生徒を対象にした化学の授業で実際に1年間にわたって使用されてきた。このプロジェクトは、オランダ政府の科学教育振興事業である“Jet-Net”(http://www.jet-net.nl)の一貫で、大手化学会社のDSM社がスポンサーとなって実現したもの。今年からは参加校が7校に拡大されており、かなりの効果が認められているようだ。

 しかし、ウェイブファンクション社内で不正コピー対策やライセンス条件などの面でポリシーが決まらなかったことから、学生版の正式な販売は現在まで行われていなかった。ただ、具体的に教育機関からの問い合わせが増えてきていることから、ついに製品化に踏み切ることにしたという。

 今回の学生版は、個人向けには提供せず、学校向けに10本単位で販売していく。価格は32万円で、ボリュームディスカウントも設定している。LAN環境で使用でき、グラフィック関係の機能はSPARTAN本体とほぼ同じ。分子計算機能は、計算サイズが分子力場法で1,000原子(フル版は無制限)、半経験的方法が40原子(同300原子)、ハートリーフォック法が30原子(同200原子)に制限されており、関数も基本的なものだけに絞られている。

 また、同社の社長であるカリフォルニア大学アーバイン校のウォーレン・J・ヒーリー名誉教授が執筆した新しい教科書「ガイド・トゥー・モレキュラーメカニクス&クァンタムケミカルカリキュレーション」も出版されており、これも同社の日本支店から入手できる。