富士通がアプリケーション保守のアウトソーシングサービス

経営戦略に則したIT基盤整備を実現、包括的サービスを体系化

 2003.07.10−富士通は9日、顧客の情報システムの保守業務を総合的に請け負うアウトソーシングサービスを体系化し、「アプリケーションポートフォリオマネジメント」(APM)の名称で提供を開始したと発表した。長年にわたるプログラム修正や手直しの累積によって複雑化してしまったアプリケーション資産全体を評価し、その投資価値や効果、優先度を継続的に明確化することで、最適な戦略的IT(情報技術)環境への変革を可能にする。今年度内に1,000名の事業体制を整備し、初年度1,300億円、2005年度に2,300億円の売り上げを見込んでいる。

 現在、ユーザーのIT(情報技術)投資動向は、世界的にみても新規開発への投資が減少し、既存アプリケーションの保守に全体の60−75%が費やされているのが現状だといわれている。とくに国内では、稼働中のアプリケーションの多くは昭和50年代に開発されたものがベースで、プログラムの修正や追加を繰り返した結果、複雑に絡まり合ってしまって解きほぐすのが難しい状況もみられるという。また、古いアプリケーションはドキュメントが紛失している場合も多く、業界では当時のエンジニアが大量に定年退職する“2007年問題”を危惧する声もあるなど、的確に保守を行って情報システムの戦略性を保つこと自体が大きな課題になりつつある。

 今回のAPMサービスは、そうした問題解決を図るとともに、新規開発に比べて堅調な保守分野でビジネス拡大を見込む富士通の新戦略だと位置づけられる。APM体系は、保守関連業務を幅広く網羅したもので、実際の保守に入る前の「ポートフォリオ診断サービス」と「APM移行サービス」、「トランスマイグレーションサービス」、実際に保守を実施するに当たっての「ポートフォリオマネジメントサービス」と「アプリケーション保守サービス」−から構成されている。

 とくに、経営戦略に基づいてIT戦略を企画・提案することと、経営戦略に基づいてIT投資の全体最適化を図ることをメインターゲットしていることが特徴となっている。具体的には、アプリケーションの保守に際してポートフォリオマネジメントの考え方を導入し、経営戦略やIT動向、ビジネス動向に則した実行計画を策定したり、日常の保守/運用における案件や価値の優先度を評価したり、アプリケーション資産を棚卸しし、整合性を評価したりすることを可能とする。戦略的インパクトと技術的インパクトを評価軸とし、「積極取り組み」、「横展開検討」、「方策再検討」、「見送り」−といった4つの領域にマッピングすることで、IT投資の全体最適を実現していく。

 また、保守業務のプロセス自体を見直し、ITサービスマネジメントの標準である“ITIL”に準拠したかたちでサービスレベル管理や改善提案、案件管理を適正に実施していく。これにより、保守/運用業務の戦略性が高まるという。

 同社は、APMサービスを事業化するに当たって、17万におよぶ国内最大の顧客ベースや年間1万件を超えるアプリケーション開発で蓄積したノウハウを総動員する計画。250社以上への適用実績を持つソフトウエアリエンジニアリングツール、この20年間に開発した77種類もの保守ツール群(影響検索、ドキュメント自動生成ツールなど)、サービス状況を可視化できる案件管理ツールapLinなどの社内システムをフルに利用する。

 さらに、業種別の開発経験の豊富な専門SE(システムエンジニア)部隊を1,000名規模で組織し、製造業・流通業・金融業・通信業などの業種特化したAPMセンターを整備して事業拠点とする。すでに、APM関連のノウハウやツールを集約して提供するAPMコンピテンシーセンターも設立しているが、ここには欧米を中心に活動している米国富士通コンサルティング社やアジア主体のDMRコンサルティング社で実施したノウハウも吸い上げて、APMサービスをグローバルレベルで提供できるようにバックアップしていく。

 事業計画としては、初年度に1,300億円(うち富士通の開発案件から引き継ぐ通常の保守サービスが1,100億円、今回のAPM新サービス分は200億円)、2005年度には人員も1,700名体制に拡大し、2,300億円(内訳は同様に1,500億円と800億円)を見込んでいる。