マイクロソフト「EDC2003」基調講演:テリー・マイヤーソン氏

インテグレーテッドプラットホーム実現、少ない投資で大きな価値

 2003.08.07−マイクロソフトは5日、パシフィコ横浜で「マイクロソフト・エンタープライズ・デプロイメント・コンファレンス2003」(EDC)を開催し、プログラムマネジメント・エクスチェンジサーバーグループディレクターのテリー・マイヤーソン氏が「可能性の扉を開く−インテグレーテッドプラットホームが創造する情報システムの価値」と題する基調講演を行った。このイベントは、情報システムの管理・運用・展開の観点から最新の技術情報を提供するもので、6日までに45のセッションが行われる。基調講演では、マイクロソフトの統合化されたプラットホーム製品群を利用することで、少ない投資で大きなビジネス価値を引き出すことができることが強調された。

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 マイヤーソン氏は冒頭で、「最近、ITは水や電気と同じで時別に競争優位性をもたらすものではなく、新規な部分に大きな投資を行うべきではないとする考え方がある。しかし、私がタイガー・ウッズと同じクラブを使ったとしても彼と同じスコアを出すことができないのと同じように、ITは企業の基盤技術であり、使いこなすレベルによって大きな価値を創造する余地が十分にある。その意味で、情報・プロセス・人をいかに連携させるかがポイント。ただ、経済状況も考える必要はあり、当社では少ない投資でより大きな価値を生み出す“インテグレーテッドプラットホーム”を確立した」と切り出した。

 これは、Windowsサーバー2003を全体の基盤とし、その上に“インフォメーションワーカーのインフラストラクチャー”と“アプリケーションのインフラストラクチャー”、“オペレーションのインフラストラクチャー”の3つが乗り、さらにその上にオフィスソフトや各種アプリケーション群が位置し、そのすべての開発環境としてビジュアルスタジオ・ドットネットが働く−という全体像を描く。(写真参照)

 マイヤーソン氏は、インテグレーテッドプラットホームは共通化されたプログラミングモデル、共通化されたアプリケーション実行環境、共通化されたビジネスプロセス、共通化された統一フレームワーク、共通化されたメッセージスキーマ定義環境、共通化されたインストールプロセス、共通化された管理構造−を実現していると説明した。

 基盤となるWindowsサーバー2003に関しては、マイヤーソン氏はTPM-Cベンチマークを例に取り、「1996年のWindowsNTでの実績は約4,000tpm(毎分のトランザクション数)で、RISC/UNIXシステムの数分の1の性能しかなく、正直言ってコストパフォーマンスも低かった。しかし、Windowsサーバー2003では70万tpmを超え、この7年間で性能は181倍に、一方で価格は10分の1に下がった。まさに、少ない投資で大きな価値を生み出すプラットホームになった」と述べた。

 続いて、インフォメーションワーカーインフラストラクチャーのデモが行われたが、その中ではシェアポイントポータルサーバーの機能が紹介された。これは、ウェブパーツと呼ばれる部品を組み合わせる形でさまざまな情報を統合できるポータルシステムであり、社内の販売データベースに接続して地域別売り上げ状況をリアルタイムに集計してグラフ表示するなどの機能を示した。検索機能も強化され、入力されたキーワードに対して、さまざまなアプリケーションを横断して情報を探してくることが可能になった。例えば、「大規模案件」で検索すると、その言葉を含むドキュメントだけでなく、大規模案件にかかわった社員の情報もヒットする。

 このパートのデモの後半では、次期オフィスに搭載される新しいアプリケーションである「インフォパス」が紹介された。これは各種帳票や報告書などの入力フォームを作成するソフトで、入力後に普通にファイル保存するとそれがXMLデータとして出力される。このため、その入力データをいろいろなアプリケーションで利用することが可能になる。また、インフォパスにはフォームの統合機能があり、例えば10人の部下からの報告書をフォーム統合することにより、10個のファイルをいちいち開かなくても、10人分の報告書を一度に閲覧することが可能である。

 そして、今回の基調講演のハイライトは、インフォメーションワーカーインフラストラクチャーのための重要な構成要素であるエクスチェンジサーバー2003の発表となる。マイヤーソン氏自身はこの製品の担当者であり、「顧客からのフィードバックを最大限に重視して、生産性と時間効率を高くすること、電気や水道のような信頼性を確保すること、劇的に運用コストを下げることを狙いとした」と強調。生産性向上の要は強化されたアウトルック2003で、回線状況にかかわらずに安定したエクスチェンジサーバーへの接続が可能になり、VPNなしでも安全に利用できるようになったという。

 また、エクスチェンジサーバーに「アウトルックウェブアクセス」機能が追加され、ブラウザーベースでアウトルック2003と同様のユーザーインターフェースと機能を利用できるようになった。利用可能なデバイスとしては、日本で普及している携帯電話にも対応できるようになっている。この機能は、専用サイト(http://www.exchangetrial.com/japan/)にアクセスすると、7日間無償で体験することができる。

 信頼性の向上に関しては、デフォルト設定をセキュアに最適化したことや、サーバーとクライアントの両方に搭載されたアンチスパム機能などが特徴。高速バックアップ/リストアやデザスターリカバリー機能などの高可用性も盛り込んでいる。とくに、セキュリティに関しては、開発チームの全員が最新のクラッキング技術を知って対応するためのセキュリティトレーニングを受け、コードを1行ずつ調べてセキュリティチェックを何重にも行ったという。

 エクスチェンジサーバー2003は、マイクロソフト社内でも運用されており、Windowsサーバー2003上で4ノード/8クラスター構成で稼働中だという。また、日本、中国、韓国、台湾、シンガポールの5ヶ国のサイトを1つに統合することにも成功したとしている。

 エクスチェンジサーバー2003のデモンストレーションでは、スパム対策機能が紹介された。クライアントのアウトルック2003上で迷惑メール設定を一つひとつ行うこともできるが、今回はサーバー側で管理者が一括してスパム対策を施すことが可能になった。スパム発信者のメールアドレスを指定することに加え、それが送られてくるSMTPサーバーのIPアドレスで受信を拒否することも可能。さらに、リアルタイムブラックリストのサービスを利用してスパムメールをフィルタリングすることも可能。

 一方、社内からの情報漏えいを防止するためのデジタルライツマネジメント機能もデモで紹介された。アウトルック2003がライツマネジメント付きのメールを受け取ると、その人に開く権限があるかどうか、エクスチェンジサーバーに問い合わせがいく仕組みだ。ライツマネジメント付きのメールは転送や印刷、文面のコピーなどができなくなっている。そうしたライツマネジメント付きの文書を作成するのも簡単で、普通にメールや文書を作成したあとに、次期オフィスソフトでツールバーに追加されているアクセス許可アイコンをクリックして制限条件を設定するだけ。

 さて、基調講演の最後には、アプリケーションインフラストラクチャーとオペレーションインフラストラクチャーの紹介が手短かに行われた。アプリケーションインフラを構成する製品群にはSQLサーバーやコンテンツマネジメントサーバー、ビズトークサーバー、コマースサーバー、ホストインテグレーションサーバーなどがあるが、マイヤーソン氏はそれをコードネーム“Jupiter”として統合する計画を明らかにした。同様に、オペレーションインフラはインターネットセキュリティ&アクセラレーションサーバー、システムマネジメントサーバー、オペレーションマネジャー、アプリケーションセンター、ウィンドウズストレージサーバーなどの製品群から構成されているが、それらも“システムセンター”の名称で統合されるという。マイヤーソン氏は「システムの運用面では自動化できていない手作業の部分が多く残っており、管理者はそれに大きな時間を取られている。“システムセンター”はそれをできるだけ自動化しようというのがコンセプトだ」と説明した。

 最後にマイヤーソン氏は、「すでに出荷中のエクスチェンジサーバー2003をはじめ、まもなく提供がはじまる次期オフィス、ビズトークサーバー2004、システムマネジメントサーバー2003などをぜひ試して評価してほしい。少ない投資で大きなビジネスの価値をもたらすことを実感してもらいたい」と述べて、講演を締めくくった。