マイクロソフト「Tech・Ed2003」基調講演:クリフ・リーブス氏

ウェブサービスはすでに実用段階、ドットネットの採用が着実に進展

 2003.08.08−マイクロソフトは7日、例年恒例のデベロッパーズコンファレンス「マイクロソフトTech・Ed2003」をパシフィコ横浜で開幕、米本社のプラットホームストラレテジーグループのゼネラルマネジャーであるクリフ・リーブス氏が「可能性の扉を開く−開発環境におけるITの新たな展望」と題して基調講演を行った。とくに、既存のアプリケーション資産を生かしながら柔軟にビジネスプロセスの統合を実現するウェブサービスや、その基盤となる“ドットネット”(Windows .NET)が着実に浸透していることが強調された。

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 リーブス氏は、「企業はこの30年間にわたってたくさんのハードやソフトを導入し、たくさんのIT資産を持ち、それで現実にビジネスを動かしている。いま、それら既存のシステム群を社内であるいは企業間で連携させることがテーマになっており、そのためには業界標準で特定のプラットホームに依存しないウェブサービスで結びつけるのが最善だ」と論じた。

 リーブス氏は、マイクロソフトが中心メンバーとして活動している業界コンソーシアムである“WS-I”の活動について紹介し、「ウェブサービスの相互運用性を実現するためには、XMLやSOAP、WSDL、UDDIなどの標準化に加え、複雑でさまざまなセキュリティの企画が混在していることに対応すること(WS-セキュリティ)、メッセージングがどんな場合でも確実に行われること(WS-リライアブルメッセージング)、トランザクション処理がきちんと完了すること(WS-トランザクション)、ウェブサービス間のオーケストレーションが実現できること(BPEL4WS)などの多くの標準化がなされる必要があり、それらはすでに急ピッチで進展している」とした。

 さらに、ドットネットをベースにしたウェブサービスは完全に実用化の段階に入っているとし、NECの導入事例を紹介した。これは、「GAUSS」と呼ばれるNEC社内の基幹業務システムで、ビジュアルスタジオ・ドットネットを用いて開発され、昨年8月にカットオーバーして以来、1年間の安定稼働の実績があるという。業務SEを100名、開発者300名を投入した大規模アプリケーションで、20種類のウェブサービスを組み合わせる形で構築されている。

 ドットネットフレームワークとビジュアルスタジオ・ドットネットの高い開発生産性に加え、システム統廃合に耐え得るデータベース特性を持つこと、適材適所の開発手法を提供できること、さまざまなシステムとの柔軟な連携が可能なことが採用の決め手になった。例えば、ウェブベースのシステムではあるが、クライアントがブラウザーに限定されるのではなく、適材適所でエクセルやアクセスなどのリッチなクライアントを利用できること、さらにはマイクロソフト製品にしばられない高い接続性を実現できたことが大きな要素だったという。「このような大規模な事例があり、しかも1年間も安定稼働していることに注目してほしい」とした。

 リーブス氏は、「データソース調べによると、ウェブサービスの開発者は現在世界で700万人おり、そのうちの250万人がビジュアルスタジオ・ドットネットを使用している。さらに、43%の開発者が今後6ヶ月間にウェブサービスの展開を検討しており、2004年には開発者の90%がウェブサービスを採用するとみられている」と紹介した。また、Javaとドットネットの普及度合では、「米国における開発者のうち、2002年第2四半期には30%の人がJava、25%がドットネットを使っていたが、2002年第4四半期にはJavaの33%に対して31%と迫り、2003年の第2四半期にはJavaを採用する人が34%なのに対し、ドットネットを採用する人は37%と逆転した」とドットネットが着実に普及していることを強調した。

 こうしたウェブサービスベースの統合システム化は“サービス指向アーキテクチャー”(SOA)と呼ばれており、リーブス氏は「アプリケーションの機能に注目するのではなく、ビジネスプロセスがどう成り立っているのかを理解してシステム設計することが必要になる。また、長期的なスパンで開発するのではなく、ビジネスチャンスに即応するため変化に対応できる迅速な開発が求められる。アプリケーション間は密結合型ではなく、メッセージング指向の疎結合型としなければならない」と説明した。

 さて、今回の講演の後半では、先に行われたEDC2003の基調講演で取り上げられた“インテグレーテッドプラットホーム”に関する説明が行われた。とくに、デモンストレーションでは年内発売予定のBizTalkサーバー2004が取り上げられ、ビジュアルスタジオ・ドットネットのオーケストレーションデザイナーによる開発の実演が行われた。BizTalkサーバーは、各種のウェブサービスや既存アプリケーションなどを連携させるインテグレーションのためのミドルウエア製品。デモでは、BizTalkサーバーで受注管理・在庫管理・生産管理の既存システム群を連携させ、顧客からの発注に対して在庫と納期を問い合わせるシステムを作成した。発注に対して在庫が不足していた場合は、生産計画を参照して納期を速やかに回答できる。アプリケーション間の連携はウェブサービスが受け持っている。デモのなかでは、さらにSQLサーバー2000のレポーティングサービス機能を組み合わせ、受注確認書や請求書などを簡単に出力できることを示した。

 来年初めに提供開始される予定の次期SQLサーバー“Yukon”については簡単にしか触れられなかったが、リーブス氏は「SQLサーバーはバージョンを重ねるごとに着実に進歩してきており、Yukonではパフォーマンスとスケーラビリティが大幅に改善されるとともに、ビジネスインテリジェンスも本格的に統合したものとなる。いろいろなデータタイプをサポートしているので、リレーショナルデータベースの真価を十分に発揮するシステムになるだろう」と紹介した。

 リーブス氏が最後に取り上げたのは“信頼のおけるコンピューティング”(Trustworthy Computing)に関する話題。マイクロソフトでは、セキュリティ向上、個人情報の保護、信頼性、ビジネスにおける誠実さ−などのさまざまな観点から取り組んでいることを強調した。リーブス氏によると、Windowsサーバー2003とドットネットフレームワーク1.1は、第三者のセキュリティ監査機関から他社システムを超える高い評価を受けたということだ。