サン・マイクロが北海道大学にバイオインフォマティクスの寄付講座を開設

糖鎖研究を支援、産学協同プロジェクト推進へ

 2003.10.23−サン・マイクロシステムズは22日、北海道大学に寄付講座として「計算分子生命科学講座」を開設し、次世代ポストゲノム研究の推進と人材育成を目的とした産学連携活動に取り組むと発表した。とくに、医療や新薬への応用が期待される“糖鎖”に焦点を当て、コンピューターを効果的に利用したシミュレーションやバイオインフォマティクス手法によって研究を推進していく。

 今回の講座は、北海道大学大学院理学研究科の西村紳一郎教授の指導のもとに、三浦信明助教授と長堀紀子助手によって運営される。サンは、この講座に対して5年間にわたって総額1億5,000万円を寄付する。研究室内ではサーバマシンのSunFire12Kやストレージなどのサン製品が利用されるが、それらは寄付ではなく、北大の正式な予算によってすでに導入が行われているという。

 今回の講座が主な対象とする糖鎖は、細胞の認識や感染と深くかかわっており、その配列と立体配座、高次構造を変えることでその機能を制御していると考えられている。しかし、糖鎖の合成と構造解析は、その結合様式の多様性ともあいまって、手作業レベルの実験的な研究が難しい分野となっている。

 そこで、同講座では、糖鎖が重要な役割を果たしている現象をコンピューターシミュレーションによって解析し、糖鎖と相互作用するたん白質の予測などの技術を開発していく。例えば、ウイルスが細胞に進入する際には、ウイルスが持つ特定のたん白質に細胞側の糖鎖が結合するといわれている。ターゲットたん白質が特定できれば、それを阻害する物質の探索により新薬開発に結びつくことになると期待される。この時、糖鎖および関連化合物に関するデータベースが整備されていれば、さらに研究が前進するわけであり、同講座ではデータベースに関する研究も合わせて行っていく。いずれにしても、計算と実験的な検証を組み合わせて研究活動を展開していくことになるという。

 なお、寄付講座は米国などでは盛んな制度で、サンは海外ではすでにいくつかの産学連携プロジェクトを手がけている。国内の大学では1980年代から寄付講座が導入されているが、サンとして国内で正式に設けるのは今回が初めて。機会があれば、さらに同様の活動を広げていきたいという。