2004年春季CCS特集:NEC

計算化学からバイオインフォまで広範に事業展開、共同研究にも注目

 2004.06.30−NECは、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)部門で計算化学を身近なものにするMolStudioを開発する一方、バイオIT事業推進センターを通じてバイオインフォマティクスに関する大学・研究機関や製薬企業との共同研究を幅広く展開している。

 MolStudioは、分子軌道法ソフトの定番であるGAUSSIAN専用のプリポストシステム。アイテニアム2搭載ブレードサーバーExpress5800/1020BaなどのNEC製HPCシステムを遠隔から簡単にコントロールできる機能を持ち、昨年からはカスタマイズを含めたサイトライセンス形式での導入事例もあらわれてきている。

 昨年8月にリリースした最新版3.2は、GAUSSIAN03のほぼすべてのキーワードとオプションに対応しており、ONIOM法の計算設定も簡単に行うことができるようになった。

 次期リリース4では、サイトライセンスで得たノウハウも取り入れ、通信時のセキュリティ強化、メニューやダイアログボックスの日本語化、たん白質に対応した機能強化などを図っていく。教育用のニーズもあるため、まずはカスタマイズ方式で教育用途に展開することも考えているという。

 一方、バイオインフォ関連の事業でも、共同研究の成果を還元するかたちでパッケージ開発が進行してきている。BLASTをPCクラスターに最適化したNECホモロジーサーチャー、バイオ文献のテキストマイニングを行うBioCompass、三菱スペース・ソフトウエアとの提携によるParacelBLASTなどを販売中。

 とくに、BioCompassは遺伝学研究所と理化学研究所への販売実績が出ており、民間企業への商談も進行中。パスウェイ解析などはあえて行わず、文献のマイニングだけに特化したことがかえって評価されているという。独自の同義語・多義語辞書を搭載しており、表記のゆれに惑わされない正確な検索が行える。NECは、医学文献データベースMEDLINEのコンテンツを提供する権利も有しており、データベースをローカルに置き、バッチ処理で一括して検索をかけたいなどの要望にも応じることができる。

 共同研究プロジェクトの中では、バーチャルスクリーニングに関するものが興味深い。独自の能動学習法を用いた田辺製薬との研究では、一次スクリーニングのヒット化合物を効率良く見いだすことに成功した。コンピューターが選び出した10個の候補化合物のうち、8個は受容体に対する高い結合性を示したが、研究者が人手で選択した化合物は10個のうち2個しか結合性を示さなかったという。

 また、現在も進行中のプロジェクトでは、日本化薬とのバーチャルドッキングの研究例もある。2002年から推進しており、現在はNEC側で選び出した候補化合物を日本化薬が実際に合成して評価している段階だという。そろそろ研究成果を発表できる頃合いだとしており、その内容が注目される。