ヒューリンクスがCCS事業を大幅強化へ

一挙に7社と販売契約、ソリューション型への転身目指す

 2004.04.27−アルゴグラフィックスグループのヒューリンクス(本社・東京都渋谷区、滝沢治雄社長)は、新薬や機能材料の研究を支援するコンピューターケミストリーシステム(CCS)事業を大幅に強化する。まずは、創薬・ライフサイエンス分野に的を絞って、欧米の先進ベンダー7社と一挙に販売契約を締結した。既存のCCS製品群と合わせて、創薬研究をフルにサポートできるラインアップが整った。同社では、これを機にパッケージソフトを単純に販売するスタイルからソリューションプロバイダーへの本格的な転身を図る計画。2年後には、パッケージ販売とソリューションビジネスの売り上げ比率を5対5の水準にもっていく。

 ヒューリンクスは、構造式描画ソフトの「ChemDraw」や分子軌道法ソフトの「GAUSSIAN」など、CCS分野で定番のパッケージを長年販売しており、科学技術系を中心に約160種類のソフトを扱っている。しかしながら、ソリューションの観点でみると欠けている部分が多ったと判断し、製品ラインアップの大幅拡充を決めた。

 今回、販売権を獲得した7社の中には、国内で初めて紹介されるベンダーが4社含まれている。まずはスペインのALMAバイオインフォマティクス(本社・マドリッド、ジュアン・カルロス・デル・カスティロ社長)で、DNAチップ/マイクロアレイのデータ解析システム「almaZen」に加え、バイオ文献のデータマイニングツール「almaKnowledgeServer」を提供する。遺伝子やたん白質とその機能や疾病との関係などを膨大な文献から掘り起こし、相互の関連づけをインタラクティブに図示する機能を持つ。2000年に設立された企業だが、これらの製品は本国でも発売されて間もないということだ。

 次は米ケムシリコ(本社・マサチューセッツ州、ジョセフ・バトノ社長)で、ADME(吸収・分布・代謝・排出)/毒性予測システム「CSPredict」を製品化している。具体的には8種類のプログラムから構成されるスイートで、溶解性予測のCSLogWS、中性・イオン形混合物分配係数予測のCSLogD、中性状態の分配係数予測のCSLogP、酸塩基解離定数予測のCSpKa、血液脳関門通過性予測のCSBBB、たん白質結合性予測のCSPB、突然変異誘発性予測のCSGenoTox、腸内での吸収性予測のCSHIA−から構成される。計算結果はケンブリッジソフトのデータ管理ソフトであるChemFinderに登録することが可能で、その機能を利用すれば構造式でデータ検索したりすることができる。

 3社目はスイスのエキスパートソフト(本社・ツーク州、ラインハルト・ソワー社長)。ニューラルネットワークを利用した物性推算ソフト「ChemBrain」は分子構造や物性データベースを使って自己学習を行い、未知化合物の物性予測を可能にするシステムである。自己学習型の物性推算エンジンを内蔵しており、バックプロパゲーション法やコホーネン自己組織化マップ法などの学習則を利用することが可能。データさえ与えてやれば、どんな物性でも予測するようになるとしており、デフォルトでは2,500化合物のデータが付属しているが、外部データベースからのインポートやユーザーデータの追加なども可能にするという。

 エキスパートシステムは、機能性色素などの研究に威力を発揮する分子軌道法システム「PiSystems」も開発している。可視光の吸収波長を予測することができ、その結果を実際のカラーチャートで表示する機能がユニーク。分子の励起状態による色の変化を文字通りひと目で確認できる。

 4番目はロシアのキンテック(本社・モスクワ、B・ポタプキン社長)で、化学工学関連の定常プロセスシミュレーター「Chemical Workbench」、気相反応シミュレーター「CARAT-MB」、量子化学計算プログラム用アドオンツール「Khimera」を持つ。最後のKhimeraはGAUSSIANやGAMESS、JAGUAR、Q-Chemなどの量子化学計算結果を加工して反応速度定数などを求め、CHEMKINやUNIMOL、POLYRATEなどの化学反応シミュレーターの入力データとして受け渡すことができるようにする。

 以上のソフトはすべて国内に初めて紹介されるものだが、残りの3社は日本市場ですでに実績がある。

 Windows版の分子モデリングシステムとして教育用途などにも実績がある加ハイパーキューブの「HyperChem」、高速で大規模な系が扱える米キューケムの非経験的分子軌道法ソフト「Q-Chem」、さらに7番目の契約先は米ウェイブファンクションで、分子モデリングシステム「SPARTAN」を販売する。SPARTANはQ-Chemのグラフィック環境としても利用が可能。

 同社では、これらの製品を単発でパッケージ販売するのではなく、ユーザーニーズに合わせて総合的な提案活動が行えるように、技術・営業スタッフの増員も含め、事業体制も大幅に強化していく方針。今回は創薬・ライフサイエンス分野に絞ってラインアップを強化したが、今後は材料開発分野なども含めた幅広いCCS領域を総合的に網羅していく。

他社大手CCSベンダーとの製品分野別比較


赤字は今回の販売提携による強化 (資料:ヒューリンクス)

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