日本HPがEMT64Tジーオン搭載のパーソナルワークステーションを発売

64ビット環境で32ビットユーザーにも恩恵、メモリー空間のユーザーエリアが拡大

 2004.06.30−日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は29日、インテルの64ビット拡張技術(インテルエクステンデッドメモリー64テクノロジー、略称・EM64T)対応の新型ジーオンプロセッサーを採用し、パーソナルワークステーション「HPワークステーションxwシリーズ」を一新すると発表した。数値シミュレーションや設計、コンピューターグラフィックス(CG)制作などの技術分野に最適。とくに、大規模モデルを使った設計・解析などの巨大なメモリー空間を要求するアプリケーションにおいて64ビットの威力が発揮されるという。さらに、PCIエクスプレスやシリアルATAなどの最新技術を搭載して価格はほぼ据え置きとなっている。

 新xwシリーズは、EM64T対応ジーオン(2.8GHz、3.4GHz、3.6GHz)をデュアルで搭載でき、拡張性の高い筐体を採用した「xw8200シリーズ」(23万9,400円から、出荷時期は7月下旬)、同様にデュアルジーオン対応ながらコンパクトな「xw6200シリーズ」(19万9,500円から、同7月下旬)、そしてペンティアム4を搭載したエントリー機の「xw4200シリーズ」(14万9,940円から、同8月中旬)の3機種から構成されている。

 EM64Tの64ビット環境に対応していることが最大の特徴で、下位機種の4200シリーズも将来的にはEM64T対応の64ビットペンティアム4(正式には未発表のチップ)が搭載できるように設計されており、同社のパーソナルワークステーションのラインは完全64ビット化される予定だ。

 同社によると、64ビット化の最大の利点はメモリー空間が広大に広がること。コストの観点でUNIXワークステーションからインテル系のパーソナルワークステーションに乗り換えたユーザーのなかには、メモリー空間が32ビットになってしまったため、それまでの大規模な設計モデルがそのまま扱えなくなり、モデルを分割しなければならないなどの不便を感じている場合もあったという。

 ただ、実際にはOS(基本ソフト)やアプリケーションも64ビット対応に変わる必要がある。EMT64Tは先行している64ビットのアイテニアム2とは互換性がなく、アプリケーションは新しくEMT64T対応へと移植しなければならない。しかし、同社では、64ビットOSが用意された段階で積極的に64ビット機へと移行することを勧めたいという。

 というのは、32ビットアプリケーションのままでも、利用できるメモリー空間のユーザーエリアは増大するため。現在のWindowsXPでは最大4ギガバイトのメモリーを積んでもユーザーエリアは2ギガバイトに限定される。現在でも、同社が提供している拡張パッチを当てることでユーザーエリアを3ギガバイトに広げることが可能だが、64ビット版WindowsXPが用意されれば、EMT64Tプロセッサーとの組み合わせにより32ビットアプリケーションでも4ギガバイトのユーザーエリアを利用することが可能になるのだという。もちろん、アプリケーションも64ビット化されればこうした制約も外れることになる。xw8200なら最大で16ギガバイトのメモリーを搭載可能。

 同社では、今回のEMT64Tマシンの登場により、32ビット市場の上位ユーザーとUNIX市場からのユーザーが移行して64ビットパーソナルワークステーションの新市場がメインストリームとして形成されると予想している。アイテニアム2マシンは、ハイパフォーマンスコンピューティング市場に一層特化していくと考えられるという。

 今年1−3月期のパーソナルワークステーション市場全体が前年同期で26%成長しているのに対して、同社は64%アップで伸長しているなど好業績を記録。同社の馬場真副社長は「今回のように新技術を業界に先駆けて導入することに加えて、競争力のある価格を大胆に呈示していることが好調さの最大の要因だと思う。これからも業界の台風の目になっていく」と述べている。