米アクセルリス:マーケティング担当副社長ビル・テイラー氏インタビュー

顧客視点を重視、製品戦略の改革に全力

 2004.12.23−米アクセルリスは、今年の4月に創薬ベンチャーのファーマコピアと分離し、ソフト専業として独立して以来、内部の体制固めを推進。その一環として、新しいマーケティング担当副社長に、9月1日からウィリアム(ビル)・テイラー氏が就任した。テイラー副社長は、IBMのソフトウエア事業部で開発ツールを手がけているラショナルソフトウエア部門においてビジネス戦略のプランニングなどを担当してきた人物。新鮮な視点から今後のアクセルリスの製品戦略がどのように展開されるのかが注目される。テイラー副社長は、顧客の視点から製品ポートフォリオを見直すことと、9月末に買収したサイテジック社のプラットホーム技術の意味合いを強調する。

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 − 一般のソフトウエア業界からCCSの世界へ移ってきて、最初に感じたことはなんですか。

 「ある意味、5−7年ほどズレているなと感じた。現在、ソフト開発ツールは利用するのが当たり前で、使うべきかそうでないかなどと悩む人はいない。しかし、われわれも1990年代にはユーザーに対して使うべきだと啓もう活動を展開してきたわけであり、いまのCCS市場はそうした啓もうがまだまだ必要な段階なのだなと感じている」

 − 新生アクセルリスの製品ラインアップの現状についてはどうみておられますか。

 「CCS業界で最大のベンダーであり、250以上もの製品がそろっている。これらの製品ポートフォリオをどのように戦略付けていくかが私の使命だが、その際には顧客の視点が最も重要だと思っている。いまは製品が機能別に体系化されているが、ユーザーの役割に応じた(ロールベース)パッケージングも必要ではないか。ユーザーには計算化学者もいれば、たん白質のモデリングをする研究者もおり、定量分析や情報処理のエンジニアもいる。それぞれに使うソフトや機能が異なる。顧客視点でのニーズと現在の製品とのギャップをいかに埋めていくかが重要だ」

 − ロールベースだと製品体系もわかりやすくなりますね。具体的にはいつごろから手がけるのですか。

 「最初は、現在の製品の中から適切なものをまとめて提供するかたちになるだろう。将来的には、ロールベースの統合製品を出せればいいと思うが、まだ構想の段階であり、時期などは未定だ」

 − 就任直後にサイテジック社を買収しましたが、この意義について教えてください。

 「(アクセルリスが提供するのは化学・製薬企業の研究開発を支援する情報技術全般であるが)、研究開発業務にもやはりワークフローというものがあり、顧客視点でみればこれを改善することによって生産性向上を達成することが可能。その意味で、サイテジックのパイプラインパイロットは研究開発のワークフローを統合するプラットホーム技術であり、研究所の部門間あるいは部門内におけるコンピューター解析作業のフローを大幅に効率化できる」

 − 確かに、パイプラインパイロットを使えば、複数のCCS製品をワークフローに沿って連携させて使うことができますから、先ほどのロールベースという観点でみても、統合システム化への重要な要素技術になりそうです。

 「その通りだ。ただ、パイプラインパイロットの最大の特徴は、どのベンダーとも連携できるオープン性であり、アクセルリスが囲い込んでしまったら、製品の魅力自体が薄れてしまう。今後ともオープン性を維持していくことが顧客の利益にもなる」

 − ところで、アクセルリスはユーザーの要望を吸収するために“フォーカスグループミーティング”という新しい取り組みをはじめました。今回、日本における最初のミーティングに出席されたわけですが、感想はいかがですか。

 「(以前はウィッシュリストというかたちで要望をいただいていたようだが)、今回はとても良かったと思う。実際に顧客の前でわれわれの製品の方向性やこれからのアイデアについて話させていただき、それに対するフィードバックを直接に得ることができた。約束したいが、今後の製品開発の80%は完全にカスタマードリブンで行く。そして、残りの20%はわれわれが独自の判断で新しい技術を顧客に提案することで、科学的な革新を引き続きリードしていきたい」

 − 今後の製品戦略に期待しています。ありがとうございました。