2004年秋期CCS特集:アドバンスソフト
FSISプロ成果を商用化、バージョン1いよいよ発売
2004.12.13−アドバンスソフトは、文部科学省ITプログラム「戦略的基盤ソフトウエアの開発」(FSIS)に参画し、その成果を商用化することを主な目的として設立された企業。プロジェクトは2006年度まで継続するが、商用版のバージョン1がいよいよ今月15日から出荷開始される。もともと産業界での実用化を強く意識したプロジェクトであり、市場での評価が注目される。
FSISは、次世代量子化学計算、たん白質−化学物質相互作用解析、ナノシミュレーション、次世代流体解析、次世代構造解析、統合プラットホーム、HPCミドルウエア−の7つのグループが活動しており、それぞれ大学や国立研究機関で開発されたソフトを基盤にしている。ゼロからの開発ではなく、実際に使われてきたソフトを商用版のレベルにまで引き上げることがメインであるため、比較的に実用化しやすかったという背景はあるものの、折り返し点での商用化にこぎつけた実績は注目すべきものがあるだろう。
具体的には5分野6本のソフトが製品化されたが、CCSの関連では「Advance/ProteinDF」、「Advance/バイオステーション」、「Advance/PHASE」の3本がある。
ProteinDFは、たん白質の全電子計算を可能とする世界初の密度汎関数法(DFT)プログラムで、独自の擬カノニカル局在化軌道法(QCLO)を使うことで、巨大なたん白質分子の電子状態を効率良くシミュレーションすることが可能。プロジェクト内では、インスリン六量体(306残基、4,176原子、2万6,766軌道)で、たん白質全電子計算の世界記録を塗り替えるなどの偉業も達成しており、世界的にもかなり注目度の高いシステムである。
バイオステーションもたん白質を対象にした量子化学計算を行うソフトだが、こちらは創薬研究の実戦的システムとして薬物分子とのドッキングシミュレーションに特化したアプリケーションとして開発されている。商用版には、計算を途中でストップして続きをリスタートできるなどの機能追加が施されている。分子をフラグメント(残基や低分子など)に分割することで大きな系でも適切に取り扱えるようにするフラグメント分子軌道法(FMO)を採用した。用途が具体的ではっきりしているだけに、産業界での急速な浸透が期待されるところ。
一方のPHASEは、材料系に対して擬ポテンシャルとDFTを用いて電子状態の第一原理計算を行うソフト。ナノデバイスやプロセス開発において、表面・界面の電子状態解析、誘電物性解析、反応経路・障壁エネルギー計算、表面拡散、触媒反応などの解析が可能。ナノスケールの物理現象解析を統合的に支援できる。アクセルリスのCASTEPと競合するポジションのソフトだという。
実際にプロジェクトで開発も手がけてきた同社は、これらのソフトの理論的背景や利用ノウハウにも長けており、コンサルティングや受託解析、ユーザーの個別ニーズに合わせた受託開発といったサービスにも事業を展開させている。