2004年秋期CCS特集:Elsevier MDL
次世代基盤製品を正式発表、エルゼビアとの連携でコンテンツ強化
2004.12.13−Elsevier MDL(エルゼビアMDL)は、統合化学情報管理の次期プラットホーム製品「Isentris」(アイセントリス)を正式に発表した。長い歴史を持つ既存製品の「ISIS」と併存させながら、徐々に移行を進める考えで、来年は具体的にユーザーサイドで評価してもらう活動に取り組んでいく。また、親会社であるエルゼビアのライフサイエンス事業部門との一体化を背景に、日本MDLインフォメーションシステムズから呼称をエルゼビアMDLに変更。エルゼビアの持つ豊富な学術情報コンテンツとの融合戦略を促進していく。
Isentrisは、IT業界標準に完全準拠した新しいプラットホーム製品として開発されたもので、ISISがカバーしてきたケムインフォマティクス分野だけでなく、新薬開発プロセス全体をサポートする統合基盤としての性格を帯びている。利用者/管理者/開発者のいずれにとっても便利になり、大幅なTCO(所有総コスト)削減にもつながることがポイント。
完全なウェブアーキテクチャーに基づいており、ユーザーはドットネットやJavaといった業界標準に基づくスキルを活用できる。エルゼビアMDL自身で対応アプリケーションを用意していくほか、サードパーティーからも各種のアプリケーションが供給されるようにしていく。
同社では、IsentrisがISISを直ちに置き換えるものではないこと、ISISユーザーにはしっかりとしたマイグレーションパスが用意されていることなどを強調しており、来年には実際に評価環境を用意して、年の後半からじっくりと普及・浸透に取り組みたいという。
また、データベースコンテンツの拡充として、「CrossFireコマンダー」から利用できる「MDLパテントケミストリーデータベース」の新規提供が開始された。これは、1976年以来の世界・欧州・米国の特許庁の公開特許情報をベースに、約150万の化学反応情報と160万以上の化合物情報を収録したもの。来年からは日本とドイツの特許も加えていく。化学の世界では、学術論文ではなく特許の中にしか記載されていない情報も多く、それらを構造式で検索できることが最大の特徴となる。
特許情報においては、絶対的な化学構造式ではなく、広い範囲の構造を包含するマルクーシュ表現が用いられることが多い。今回のデータベースでは可能なかぎりマルクーシュ構造を通常の構造式に変換してデータ登録しておくことで、検索の精度を高めることに成功している。通常の構造式検索だけでなく、天然物から精製されたものだけなどの条件でデータを抽出することも可能。特許情報検索の専門家にも、一般の研究者にも利用してほしいコンテンツだという。
一方で、同社はエルゼビアのオンラインサービスの紹介にも力を入れていく方針である。学術文献サービスの「サイエンスダイレクト」や「SCOPUS」、薬学・医学の約5,000の学術誌を網羅した「EMBASEドットコム」、電子薬理学事典「xPharm」などがあり、MDLで検索した化合物や反応情報からそれに関連した文献を参照したり、逆に文献内に記載されている情報を使ってMDLのデータベースを検索したりするなど、相互に行き来しながら考察を深めることができる。
とくに、SCOPUSは先月からサービス開始したばかりで、エルゼビアだけでなく世界の4,000以上の出版社と連携し、1万4,000以上の科学・技術・医学・社会科学のタイトルを網羅している。抄録・索引データベースだが、フルテキスト論文へのリンクも完備されており、情報調査の時間を大幅に節約してくれる。
また、EMBASEドットコムは、薬学系文献データベースEMBASEと医学系文献データベースMEDLINEを統合したもので、言葉の部分/全体関係や同義関係、類義関係などを整理した辞書(シソーラス)を持っているため、正確でもれのない検索ができるという特徴がある。