2004年秋期CCS特集:科学技術振興機構
豊富なデータベースが利用可能、固定料金制の新サービスも展開
2004.12.13−科学技術振興機構(JST)は、わが国における科学技術基本計画の中核的実施機関であり、その使命の1つとして科学技術情報の流通促進を通して科学技術の振興基盤を整備するという事業を展開している。具体的には、学術文献などのデータベース化とオンライン検索サービスを提供しており、昨年10月に独立行政法人となってからは、利用者の裾野を広げる新サービスにも意欲的に進出しつつある。
JSTが提供中の化学関連分野における最大のサービスは米CASおよび独FIZカールスルーエと結んだオンライン検索サービス「STN」である。世界の250以上のデータベースから構成され、国内でも6,000機関以上が利用しているという定番中の定番だ。とくに、化学物質辞書データベース「レジストリーファイル」には8,800万件の情報が収められており、これと「バイルシュタイン」を合わせると、情報が得られない化学物質はほとんどないということだ。レジストリーファイルには、実測および計算で得られた物性値、各国の法規制情報も収録されていることが特徴。レジストリーファイル収録物質の反応情報を得るには「CASREACT」を用いる。
また、STNの中の「CAplus」はJSTが独占的にサービスしているデータベースで、学術文献と特許情報を合わせて2,360万件のデータがあり、化学構造式での検索が可能。引用文献をたどって調査を深めることも容易で、原文のフルテキストにアクセスすることもできる。
STNは英語で利用するが、「JOIS」は日本語が使えることが特徴となる。これは世界中から化学関連を含む科学技術全分野の原著論文を取り寄せて日本語の要約を付け、日本語のキーワードを中心に検索できるようにしたデータベースで、1975年以降の約2,000万件の文献を収録している。日本で発行されている学術誌、報告書、技報などをほぼ網羅した。このうち、化学関連分野の文献は20%を占めるが、特徴として物質名や分子式での検索が可能な化学物質辞書(約200万物質を収録)も搭載されている。
最近では、検索のウェブ化にともなって、一般の研究者でも使いやすいサービスが求められているため、JSTでも難しいコマンドを使わずにメニュー方式で検索できる「JOISEasy」を提供してきた。しかし、従量制ではなく、固定料金制へのニーズが高かったことから、さらなる利用者拡大を目指して昨年10月に新サービス「JDream」を開始した。当初は大学・病院向けに限定してスタートしたもので、すでに700機関が利用中だという。
JDreamで検索できるデータベースはJOISとほぼ同一だが、とにかく使い方が簡単であり、実際にJDreamには一般個人を対象にした「JDreamPetit」(月額1,000円固定)も用意されているほど。国内の学会誌などの電子化の進展にともない、JDreamの検索結果から直接オンラインで電子ジャーナルにリンクできる文献も急速に増えてきているという。
JSTでは、このJDreamを企業向けにも紹介しはじめた。化学関連文献における調査における検索のしやすさと、時間や料金を気にしなくてすむ固定料金制によるメリットを訴えていく考えで、かなりの反響を呼びそうだ。