NECが分子動力学計算専用サーバーの開発に着手

富士ゼロックスのMDエンジン技術を継承、2005年度製品化目指す

 2004.10.02−NECは1日、富士ゼロックスから分子動力学法(MD)計算専用ハードウエア「MDエンジン」の技術を継承し、NECC独自の半導体・コンピューター技術を適用したMD専用サーバーの開発に着手したと発表した。創薬研究において、たん白質の構造や折り畳みなどの予測を行うことに利用する。MD特有の原子間相互作用計算を高速・高精度に実行することができ、通常のPCサーバーに比べて計算時間を100分の1以下に短縮することを目指す。2005年度に製品化する予定。

 富士ゼロックスの「MDエンジン」は、大正製薬などの研究グループの協力・ノウハウ提供を得て、1992年度からの通産省プロジェクトの成果として開発されたもの。1996年5月にテスト的に発売されたが、2000年7月にパワーアップした「MDエンジンII」が製品化されている。富士ゼロックスは今年の春にこの事業を中止したが、その背後ではNECへの技術譲渡の動きがあったようだ。NECが正式に技術を継承したのは今年の7月。

 MDを利用したたん白質構造解析は、スーパーコンピューター分野のグランドチャレンジの最大テーマの1つだが、創薬などの民間用途での普及を考えると、大規模なスーパーコンではなく、リーズナブルなサーバーとして提供されることが望ましい。MDエンジンIIはパソコンのPCIバスに内蔵して利用するアクセラレーターボードとして製品化されていたが、今回NECが製品化する専用サーバーの形態や構造などの詳細はまだ決定していない。

 NECでは、いくつかの共同研究を通してインシリコ創薬のためのソフトウエア開発を推進してきており、その中にはMD計算を利用するシステムも存在する。専用サーバーの製品化に際しては、それらとの統合システム化も考慮される模様。

 なお、富士通が開発中の「バイオサーバー」(仮称)もMD計算の専用サーバー。富士通のマシンはすでに実際のプロジェクトで試作機が稼働中であり、製品化は先になるとみられるが、性能面での優劣を含めて開発競争が注目される。