アスペンテックが次世代ソリューションaspenONEを発表

EOM構想を具体化、ビジネス/プラント/プロセスの全体最適化実現

 2004.10.20−米アスペンテクノロジー(アスペンテック)は、生産現場と基幹システムをつないでプロセス産業における全体最適化のデシジョンメイキングを可能にする“EOM”(エンタープライズオペレーションズマネジメント)構想を具体化し、次世代ソリューション製品として「aspenONE」を開発した。オイル&ガス、石油、化学、ファインケミカル、医薬、消費財−の6つの産業向けにソリューションマップを整備し、同社の全製品を統合化したかたちで提供していく。業界標準に基づいて他社の製品や技術を組み込めるように設計されており、あらためてマイクロソフトやシェルグローバルソリューションズなどと戦略提携を結んだ。今後、日本を含めた全世界で提案活動を強力に推進していく。

 アスペンテックのEOM構想は、2年前の世界ユーザー会議「アスペンワールド2002」で発表されており、シェルやコノコフィリップス、P&G、セラニーズ、アベンティス、デュポン、ダウケミカルなどの先端ユーザーとの共同プロジェクトをベースにしながら製品開発を進めてきていた。このため、すでにEOMは約90カ所のプラントでの稼働実績があるという。

 ただ、アスペンテックは、ハイプロテックやアイカラス、チェサピーク、ザイカッド、シムテック、B-JAC、セットポイント、DMCC、ISIなど20社あまりのベンダーを吸収合併してきたため、全製品を合わせるとCDが60枚、インストールの方法が5種類、ライセンス管理方式が3種類もあり、いわばいろいろな製品の寄せ集めのような製品体系になっていた。

 今回のaspenONEは、ライセンス管理やインストールも共通化され、全製品が6枚のDVDに収録されている。ユーザーには、アドミニストレーションディスクとドキュメントディスクを加えた8枚のDVDセットが一括で提供されるという。ライセンスキーを使って必要なモジュールだけがインストールされる仕組みで、各ユーザーが優先順位の高いソリューションから段階的に導入できるようにしていく。また、既存ユーザーは、現在使用中のシステムを入れ替えるのではなく、継続して使用しながら新しい製品体系へと移行・発展させることが可能。

 aspenONEの具体的なソリューションは6つの業種に分けて展開されるが、基本的には業界標準に基づくモデルを利用して各種のアプリケーションを統合し、基幹業務系から生産系までの情報の共有化やビジネスプロセスの改善を実現する。マイクロソフトのシェアポイントポータルサーバーをベースに、ユーザー権限に応じたすべての情報(ビジネス、プラント、プロセスの3つを網羅)に一元的にアクセスでき、それぞれのパフォーマンスをリアルタイムに解析することで、後追いではなく率先した意思決定を行うことが可能になる。とくに、KPI(キーパフォーマンスインジケーター)を明確に定め、パフォーマンススコアカードを使って、ビジネスとプラントとプロセスの全体最適化を図ることにより、これまでの常識を超えた導入効果が期待できるということだ。(別表「EOMの導入効果」を参照)

 また、aspenONEは、オープンシミュレーション環境を備えており、独自のASPEN PLUS、HYSYS、RefSYSといったシミュレーター群をはじめ、他社ツールも統合して利用することが可能になった。このため、プラント全体のモデル化やシミュレーションを行うことが容易であり、化学工学のエンジニアリング環境としても優れた機能を持っている。

 同社では、今回のaspenONE発表に合わせて、マイクロソフトおよびシェルグローバルソリューションズと戦略提携を結んだ。 aspenONE自体がドットネットをはじめとするマイクロソフトの技術や製品群をベースにして開発されており、プラットホームとしても全面的にWindowsを採用している。マイクロソフトとはEOM普及を目指してマーケティングや販売面でも協力体制をとっていく。一方のシェルグローバルソリューションズはロイヤル・ダッチ・シェルグループの情報事業会社で、とくにaspenONEの石油産業向けソリューションにおいてプランニング、スケジューリングとブレンディングモジュールの提供を行う。 aspenONE認定VAR(付加価値再販業者)の第1号になるようだ。

EOMの導入効果


資料:アスペンテック

  Before EOM
Customer Value Task Improvement Business Process Improvement
Solution Focus Stand-alone Applications Tailored to Users Integrated Applications Tailored to Business Process
Visualization Multiple GUIs Single Portal-Based GUI
Models Primarily Used Within Stand-alone Applications Consistent Models Used by Multiple Roles (Users)
Data Not Easily Shared Between Applications Common Data Model Enables Sharing Among Applications
Integration Custom, Services Intensive Standardized, Out of Box
Total Cost of Ownership HIGH : Multiple Vendors and Disparate Applications LOW : Fewer Vendors and Standardized Integration