マイクロソフトが独自開発中の次世代検索エンジンを公開
MSN事業強化の一環で年度内に採用、日本語の試作版も
2004.10.30−マイクロソフトは28日、MSN事業に関するプレス向け説明会を開催、その業績や今後のサービス開発計画などについて明らかにした。とくに、独自で開発中の新型検索エンジンの狙いについても紹介されたが、すでに10月13日から試作版が公開されており、“Google”を超える検索速度や検索精度を体感できるという。今年度中(2005年6月まで)にMSNの検索機能に正式に組み込まれる予定。
記者説明会の冒頭で、マイクロソフトの塚本良江・執行役MSN事業部長はMSN事業の順調さをアピールした。現在39ヵ国20言語で展開されている世界最大級のポータルサイトで、毎月3億5,000万人が訪れる。国内においても利用者は月間3,200万人で、“Yahoo!”に次いで“楽天”と第2位を争う地位にある。
マイクロソフト全体は7つの事業部から構成されており、今年の第1・四半期(7−9月期)は全社の売り上げが91億8,900万ドル(前年同期比12%増)、営業利益が40億5,100万ドル(同29%増)、純利益29億100万ドル(同11%増)だった。その中でMSN事業部は全体の約6%を占める5億4,000万ドル(同10%増)の売り上げを達成している。とくに、営業利益が7,700万ドル(同35%増)と伸びているという。北米市場ではいまでもISPサービスを実施しているが、その会員数は560万人から380万人へとダウンしており、その分の売り上げは3,000万ドル弱のマイナスだったが、広告収入が23%増と成長し、全体をプラスに押し上げたという。
塚本事業部長は「今年度中に楽天を抜き、2007年にはYahoo!に並びたい」とし、具体的な事業戦略として、(1)独自開発の新検索エンジンの導入(2)新しいコミュニケーションサービスの導入(3)パソコンと携帯電話を統合したサービス展開(4)パートナー戦略の推進によるコンテンツ強化(5)エンターテインメント分野を中心とする新市場開発−の5項目をあげた。
現在、MSNの利用者のうち、検索を利用するのが25%、メールやインターネットメッセンジャーなどのコミュニケーション関係が40%弱となっており、5つの戦略分野の中でも1番目と2番目がとくに重要になってくる。
なかでも注目されるのは新型検索エンジンだろう。塚本事業部長は、「マイクロソフトはこれまでウェブ検索では他社の技術を採用してきた。Googleの登場で検索技術は大きく進歩したが、まだまだ正しい答えをみつけるまでに平均で11分もかかっており、キーワードを複数設定するなどの複雑な検索では半分近くがゼロマッチングになってしまう。ユーザーが求めているのは何億ものウェブページが検索できることと、ウェブ検索結果の表示スピードが速いことにつきるわけで、独自開発中の新型エンジンはこの点を重視している」と説明する。
一つには、通常のウェブページの検索だけでなく、検索できるカテゴリーを指定できるのが特徴で、キーワードを入れたあと、「ウェブ」、「ニュース」、「辞書」、「百科事典」、「株価」、「映画」、「ショッピング」の項目を選択して検索を実行することができる。米国のMSNの検索ページ(http://search.msn.com)はすでに新バージョンに変わっており、実際に試してみることができる(http://www.imagine-msn.com/search/en-us/)。日本語のページもある程度はクロールされているようだ。
開発中の新型エンジンについては、10月13日から「テクノロジープレビュー2」(http://sandbox.msn.com)として試作版の公開がはじまっている。こちらは、すでに日本語版(http://techpreview.search.msn.co.jp)も用意されている。実際に検索をかけて現行の「MSNサーチ」と比べてみると、かなりの違いがあることがわかる。明らかに、的確な情報がより多く得られる。塚本事業部長は「Googleよりも高速に、より良い検索結果が表示されることを実感してもらえると思う」と話している。
また、塚本事業部長は「ウェブ検索で得られる情報は、人が知りたいことの20%程度をカバーしているに過ぎない。会社のイントラネットの中や自分自身のパソコンの中に本当に重要な情報があったりする」とし、将来的には統合的・網羅的な検索技術へと発展させていくビジョンを示した。ただし、具体化はかなり先のことになりそうだ。