富士通が分子モデリングシステムCACheの最新バージョン7を開発
MacOS Xにネイティブ対応、北米市場での拡大狙う
2005.03.15−富士通は、統合分子モデリングシステム「CAChe」の最新バージョン7を開発、14日から世界同時に発売した。Javaをベースに内部アーキテクチャーを刷新しており、外部プログラムとの連携や機能追加などがモジュラー形式で簡単に行えるようになった。材料科学と生命科学の両分野に適用できる機能を備えていることに加え、とくにマッキントッシュ版でWindows版と同等の機能を実現したことが特徴になる。米国の大学やバイオ産業でマック人気が根強いことから、米国市場に一気に浸透しようとの狙いもある。出荷開始は4月からで、2年間で10億円のパッケージ売り上げを見込んでいる。
CACheは、もともとマック向けの分子モデリングソフトとして開発された製品で、富士通が2000年4月に当時の英オックスフォードモレキュラーグループ(OMG、現在のアクセルリスの前身の1つ)から事業を取得した時点でのバージョンは、マック版が4.1.1、Windows版が3.2だった。富士通が初めて独自でバージョンアップしたのがマック版4.5とWindows版4.4だったが、それ以後はWindows版の開発が先行し、現在の最新バージョンはWindows版が6.0に対し、マック版は4.9。
今回の最新バージョン7は、MacOS Xに初めてネイティブ対応したもので、とくに画面まわりとプログラミングインターフェースがJavaで再構築されており、機能と操作感はWindows版と同一となった。今後は両プラットホームを同時にバージョンアップしていく方針であり、その意味ではバージョン7はこれからのベースになる重要なリリースだといえるだろう。コードの共通部分が増えたため、バージョンアップのタイミングもこれまで以上にスピードアップすることが期待される。
CAChe自体は、材料科学系の「CACheシリーズ」と生命科学系の「BioMed CACheシリーズ」に大別されるが、製品体系や価格に変更はない。ただし、サーバー用の計算エンジンについては、IRIXとAIXはサポート中止の方向で、Linuxに一本化していく。また、同社が開発中の「バイオサーバー」上でCACheから利用できる計算エンジン2種(分子動力学ソフトのGROMACSとドッキングシミュレーションソフトのFastDock)を提供する。
なお、バージョン7での機能強化は、使い勝手とパフォーマンス向上がメインになっており、主な項目としてはテンプレートに使える化合物ライブラリーを300種に増加、結合長や角度などを表示したまま分子の回転・移動が可能、アミノ酸残基や分子の部分構造などのグループ化が可能、結晶構造の作成速度を15倍に高速化、計算設定画面の改良、ドッキングアルゴリズムの追加(遺伝的アルゴリズムとツリープルーニング)−などがあげられる。また、プログラミングインターフェースがJavaになったため、知識のあるユーザーは自分でCACheをカスタマイズしたり機能を組み込んだりすることが可能になった。