日本総合研究所が商用版J-OCTAを3月末に発売
実戦的な機能搭載、自動車・電気などの材料開発に幅広く応用可能
2004.01.12−日本総合研究所は、経済産業省プロジェクトで開発された材料設計支援システムを商用化した「J-OCTA」の開発を完了、3月末から正式に販売・出荷を開始する。本プロジェクト終了後に予約購入者を募り、3年間の商用化プロジェクトとして進めてきたもの。同社では、開発と並行してコンサルティングや受託解析サービスを提供しながら、実際の研究現場におけるニーズや活用方法をノウハウとして蓄積してきた。このため、無償公開されているフリー版「OCTA」と比べて、実戦的なシステムに仕上がっていることが商用版の最大の特徴。使いやすいグラフィック機能や解析ノウハウの共有に役立つシナリオ機能および事例データベースが整っており、化学・素材産業をはじめ、自動車やエレクトロニクス産業からも強い関心が寄せられている。
日本総合研究所が製品化したJ-OCTAは、2002年3月まで実施された「高機能材料設計プラットホームの開発」(通称・土井プロジェクト)の成果物として公開されている「フリー版OCTA」(http://octa.jp)をベースにしたもの。プロジェクト後もフリー版は凍結されておらず、現在も最新の2003年版が提供されているほか、BBSの登録者が約800人、さらに専門的な討論を行う場として新化学発展協会内に「OCTAワークショップ」(約50人が参加)が組織されているなど、引き続き活発な活動が行われている。
しかし、フリー版OCTAはアカデミックコードに近い存在で、企業の研究者が日常の研究テーマに対して機能を使いこなすには敷居が高いことも事実。商用版J-OCTAはそうした面を考慮して開発されたもので、フリー版OCTAにそろっていない各解析エンジン向けのモデラー機能を完備するとともに、解析手順をまとめておけるシナリオ機能やプロジェクト管理機能、実際の解析事例をひな形として利用できる事例データベース機能などを備えている。
日本総研では、2003年にアルファ版、2004年にベータ版をリリースし、とくに昨年は7月にRC1(リリースキャンディデート1)、9月にRC2、さらに年が明けてRC3と定期的にアップデートを行っており、実際のソフトを利用してのコンサルティングや受託解析を実施してきた。具体的には、自動車用エンジニアリングプラスチックの熱・構造・電気特性予測(COGNACを利用)、高安定性・高出力を可能にする燃料電池向け高分子電解質の開発(COGNACを利用)、高分子内での荷電粒子の電気泳動を利用した電子ペーパーの開発(MUFFINを利用)、タイヤ性能を高めるためのカーボンブラックなどの混合解析(第一原理計算、COGNAC、SUSHIを利用)、塗料の薄層乾燥膜の強度・熱特性解析(COGNACを利用)、炭素繊維強化プラスチックの層間接着強度や多層積層材の強度特性・熱特性予測(COGNACを利用)、細胞表面の膜たん白質の運動解析および薬物分子との相互作用解析(オプションの分子軌道計算インターフェースを利用)−といった幅広い分野でのシステムの有効性を確認できたという。
土井プロジェクトには、日本総研を含めて11社の企業が参加したが、現時点までの予約購入者は20数社に達している。国家プロジェクト成果の商用化は、システムがプロジェクトに参加していなかった企業に受け入れられるかどうかが大きなポイント。あと5年ほどしないと最終的な評価はくだせないだろうが、これまでのところは今回の日本総研の商用化プロセスは成功を収めたといえそうだ。
ソフトウエアの価格は、COGNACを中心にした基本構成で500万円、オプションを含むフル構成で1,100万円となっている。なお、同社では25日にフリー版OCTAのプロジェクトリーダーを務めた東京大学・土井正男教授を迎えて、商用版のプレリリースセミナーを開催する。詳細は日本総研のホームページ(http://www.jri.co.jp/si/nano-bio/j-octa/prerelease.html)を参照されたい。