クレイ・ジャパンが日本市場で再び事業展開を活発化

LinuxベースのCray XD1を拡販、日本法人の体制を強化

 2005.02.23−スーパーコンピューターベンダーのクレイ・ジャパンは、日本市場の再開拓に本格的に乗り出す。今年1月に、新社長としてヒューレット・パッカード(HP)のアジアパシフィックLinux&HPCゼネラルマネジャーを務めた中野守氏を招き、体制を整えた。コストパフォーマンスに優れた新機種「Cray XD1」を主力とし、構造解析や流体解析などの主要アプリケーションの移植が完了する6月に合わせて、営業、マーケティング、サービスなどの人員を増強する。販売チャンネルの拡大も計画しており、今年下半期から積極的に事業拡大を進めていく。

 クレイは、1980年代から1990年代にかけて世界最大のスーパーコンメーカーとして市場を支配したが、ダウンサイジングの波にもまれて業績が悪化、1996年にシリコングラフィックス(SGI)に買収された。その後、2000年にテラコンピュータがSGIからクレイ事業を買収し、社名をクレイに改めて現在に至っている。

 最近の売り上げ(1−12月)は、2003年に約2億4,000万ドルだったのに対し、2004年は1億5,500万−1億6,500万ドル(見込み値)と不振で、製品の端境期にも当たってしまったため、ちょうど底の状態に陥ったという。製品面では、ベクトル型の旧機種「Cray X1」に加えて、昨年から本格的に市場投入したMPP(マッシブリーパラレル)型の「Cray XT3」、エントリー/ミッドレンジの「Cray XD1」が売り上げに貢献すると期待されるため、2005年は3億2,000万ドル以上の売り上げ規模を目指していく。

 このためにも重要なのが、日本市場でのクレイの存在感を再び高めること。中野社長は「長いブランクがあったとはいえ、クレイブランドへの期待感はまだまだ大きいことがわかった」としており、とくにXD1を中心に民間需要を狙っていく計画である。

 XD1は、もともとオクティガベイ社が開発したマシンで、昨年の春にクレイが買収したもの。AMDのオプテロンプロセッサーを搭載した業界標準タイプのLinuxマシンだが、PCクラスターやブレードサーバーとはアーキテクチャーが大きく異なっている。2個のオプテロンを搭載したボードを6枚差した3Uの厚さのシャーシが最小単位であり、つまり1シャーシで12プロセッサー、1ラックでは128プロセッサーの高密度構成をとることが可能。

 とくに、プロセッサーボードにはクロスバースイッチが直付けされているため、配線なしで12プロセッサーを密結合することが可能。32−64プロセッサー構成でも通信のオーバーヘッドが発生しにくいアーキテクチャーとなっている。また、ボード上にはオプテロン以外にもFPGA(大規模プログラム可能ロジックデバイス)が実装されており、検索処理やソーティング、信号処理、音声/ビデオ処理、暗号化処理、乱数発生などを単独で実行させることができる。6月ころにはFPGA向けの開発環境を用意し、この機能を生かしたアプリケーション開発が行えるようにする計画だ。

 サードパーティーアプリケーションの移植は、計算化学やバイオサイエンス系が先行しているが、衝突解析や熱流体解析などのCAE(コンピューター支援エンジニアリング)系も5月から6月にかけて出そろう予定。

 XD1は、1シャーシで約500万円からと手ごろな価格であるほか、すべてがあらかじめ組み上げられているためにハード・ソフトの相性問題などもなく、導入してすぐに利用をはじめることができるというメリットがある。このため、民間企業の研究所向けに売り込みをかける考えで、日本法人のスタッフも現在の20数名から2−3割の増員を図る。

 同時に販売チャンネルの強化も進める。現在は、旧クレイの出身者が多いベストシステムズ(本社・茨城県つくば市、西克也社長)が代理店となっているが、市場や地域のカバー範囲によってさらにいくつかの代理店を設けたい意向であり、すでに準備に入っているという。