CTCLSがシミックスインテリケムと提携して電子実験ノート市場に進出
医薬研究開発の5業務をカバー、高度なカスタマイズと短納期実現
2005.07.26−CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)は25日、製薬業向け電子実験ノートブックシステム市場に進出し、米シミックスインテリケム社が開発した「IntelliChem iELN」を販売開始したと発表した。研究所の業務フローに組み込まれるエンタープライズレベルの製品で、電子記録のための法規制にも完全準拠している。医薬研究開発の主要な業務領域に特化した5つのコンポーネントで構成されており、業務対象の広さやカスタマイズの柔軟性、システム構築期間の短さなどが特徴となる。ソフト価格は100ユーザーライセンスで約5,000万円。2006年度に関連サービス込みで3億円の売り上げを見込んでいる。
今回のiELNは、もともとはインテリケム社の製品で、昨年11月にシミックスが買収し、子会社の「シミックスインテリケム」として新体制で事業を発展させている。CTCLSは以前からシミックスの販売代理店の関係にあったため、今回の製品を本格的に扱うことにした。
電子実験ノートは、手書きで行われている実験ノートの作成・保管業務を電子化するためのシステムで、研究業務支援システムのインフラとしてエンタープライズレベルで導入されるという性格がある。このため、個別ユーザーに合わせたカスタマイズやシステム構築、コンサルティングも含めた総合的なサービス提供が重要になる。とくに米国においては、確実な導入を期すために3ヵ月のパイロットプランを実施し、ユーザー社内にプロジェクトチームを立ち上げて、実際に使用・評価を行いながら機能やユーザーインターフェースを練り上げて使い勝手を向上させるというプロセスをとっている。CTCLSとしても、開発元と協力して同様のサービスを国内で展開できるようにしていく。
また、完全な日本語対応は次のバージョン5からとなるが、CTCLSでは日本からエンジニアを開発チームに派遣し、日本語版の製品化へ向けて全面的な協力体制をとる。次期バージョンのリリース時期は今年の10月ごろになるという。
さて、iELNの最大の特徴は、医薬研究開発の主要な業務領域に特化した5種類のコンポーネントをあらかじめ備えていることで、具体的には低分子化合物を対象にした実験業務範囲をカバーする「Discovery」、「Synthesis」、「Formulations」、生物学的な実験を対象にした「BioProcess」、分析業務を対象にした「Methods」−が用意されている。
基本的にはドキュメント管理機能が中心になるが、同社独自のプラットホーム技術である“VAULT AXD”を介して柔軟なデータ統合が可能。すべてのデータがサーバーで一元管理されるため、過去のデータ検索が容易になるほか、研究者間での情報の共有化も促進され、業務の生産性が最大で35%向上するという。
あらかじめ、MDLやACD製品、ニュージェネシス製品などとのインターフェースを装備。ドットネットやXMLなどの標準的な開発環境をサポートしているため、研究所内に存在するさまざまな既存システムやユーザーアプリケーションを連携・統合させることも用意である。
海外では、ファイザー、アストラゼネカ、ブリストル・マイヤーズスクイブなど、世界の製薬上位10社のうちの6社で採用された実績があるが、そのうちの2社は完全に紙をやめて電子ノートに移行している。米食品医薬品局(FDA)の電子記録・電子署名に関する規制である21CFRパート11、安全性試験基準のパート58、医薬品製造に関する規制であるパート210/211などに準拠しているため、電子署名と時刻認証などの技術を組み合わせることにより、特許対策など知的財産保護にも有効なことが注目されているようだ。CTCLSでは大手製薬会社だけでなく、中堅クラスにもニーズの広がりがあるとみて、積極的な販売活動を展開していく。