NECとNECソフトがJBIRCにバイオ用グリッドシステムを導入
メタスケジューラーで2つのPCクラスターを統合、ウェブポータル経由で操作
2005.07.01−NECとNECソフトは、生物情報解析研究センター(JBIRC)に対して遺伝子解析のためのグリッドコンピューティングシステムを納入した。全体で64プロセッサーから構成されており、2つのPCクラスターを接続したもの。NEDO技術開発機構から委託された「遺伝子多様性モデル解析事業」の成果の一部として構築された。実際に開発を担当したNECソフトでは、バイオ向けグリッドアプリケーション「BioCollabo」(バイオコラボ)を製品化しており、今回の実績を機にこの分野におけるグリッド導入に力を注ぐ。
バイオインフォマティクス分野では、データ量と計算量が急速に増大することへの対応が課題となっている。JBIRCでも、2002年に16プロセッサー構成のNEC製PCクラスターを導入したが、翌2003年にはさらに48プロセッサーの2つ目のPCクラスターを追加導入しているほど。今回のグリッドシステムは、この現有資産を有効活用するとともに、将来の柔軟な拡張を可能にする目的で構築された。
大きなポイントは、2つのPCクラスターを束ねる“メタスケジューラー”の存在。各クラスター内のそれぞれのプロセッサーの稼働状況に応じて、リソースを自動的に割り当て、投入されたジョブを自動的にスケジューリングしてくれる。従来は、計算を実行するクラスターの選択やリソースの予約をユーザーが判断して行う必要があったが、今回の新システムではユーザーは自分のジョブを投入するだけ。
しかも、ウェブポータル経由での操作が可能であり、コマンドラインからではなくブラウザー上でジョブの実行を命令することが可能。大量のジョブがすべて最適にスケジューリングされるため、全体のスループットも大幅に高まる。
また、計算能力が不足した場合に拡張することも簡単で、例えば新たなPCクラスターを接続してメタスケジューラーの設定情報を変更するだけで、システムの能力を大幅に高めることができる。
今回のようなグリッドシステムは、ハードウエアを追加せずに高速な計算環境を実現できる点で、中堅企業や大学などの研究室からも注目されるとみられる。
なお、NECソフトが製品化している「BioCollabo」は、今回のシステムとは動作するアプリケーションが異なるが、グリッドシステムとしての機能はほぼ同じ。BLASTやClustalW、HMMERなどの基本的なプログラムを標準装備しているという特徴がある。