菱化システムがCCGの最新版MOE2005.06を発売

インシリコ創薬支援機能を大幅強化、操作性・使い勝手も向上

 2005.08.23−菱化システムは、加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)が開発した統合コンピューターケミストリーシステム(CCS)製品である「MOE」の最新バージョンを発売した。たん白質構造解析、化合物ライブラリー設計、ドッキングシミュレーションなど、創薬に必要とされるアプリケーションを統合したもの。今回の最新版では、インシリコスクリーニング機能の強化が図られたほか、計算化学・シミュレーション機能の拡充、分子構築ツールの改良による操作性向上など、多数の機能追加や改良が行われている。

 最新版のMOE2005.06では、薬物と受容体とのドッキングプログラムを刷新した。菱化システムが拡張モジュールとして開発・提供している「ASEDock」の考え方に準じた機能を実現しているが、より高速性を重視した“アフィニティデルタGスコアリング”といった手法を取り込んでいる。また、分子の三次元構造をフィンガープリント化できる“シェープサーチ”機能は、有望なリガンドの形状が決まっている場合などに、同じような形のものだけをフィルタリングしておいてスクリーニング効率を高めたいといった用途で威力を発揮する。さらに、活性のある化合物とそうでないものとを見分けるファーマコフォアモデルを自動的に構築できる“ファーマコフォアエルシデーション”など、インシリコ創薬のための支援機能が大幅に充実した。

 一方、計算化学分野では、イーオンテクノロジーが開発したパラメーターセットがデフォルトあるいはオプションで提供されるようになった。MOPACやGAMES、GAUSSIANといった分子軌道法プログラムとの正式なインターフェースも実現。MOPACに関してはフリー版のバージョン7が添付される。また、菱化システムが開発した「バルクモデリング&シミュレーション」モジュールで実現した“ウォールポテンシャル”機能が正式採用されて組み込まれた。SVL形式の外部コードではなく、コア部分に内蔵されたため、パフォーマンスが大幅に向上しているという。

 さらには、大量のSDファイルを処理するなどのケムインフォマティクス機能も強化された。1つにはコマンドラインツールの充実で、SDファイルを一括で読み込んでソートする「sdsort」、任意の条件での抽出を行う「sdfilter」、ディスクリプター計算を行う「sddesc」が提供される。また、“オートマチック2Dディピクション”は、MOEの内部データベース内の分子の三次元構造データをリアルタイムで二次元構造式に変換して表示する機能で、他のソフトよりも自然できれいな構造式を出すことができる。

 そのほか、ユーザーインターフェースが細かな点で洗練されてきており、操作性や使い勝手が高まっている。分子ビルダーにテンプレート機能が追加されたため、実験化学者が直観的に操作できるようになったことや、テーブルやテキストやグラフィックを美しく出力するための印刷機能が実現されたことなどがあげられる。