セールスフォース・ドットコムがオンデマンドCRMサービスを強化

新アーキテクチャー“SODA”を実現、ウェブサービス統合でソリューション

 2005.07.12−セールスフォース・ドットコムは、ASP(アプリケーションサービスプロバイダー)型のオンデマンドCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)ソリューションをバージョンアップし、100以上の機能強化を実施した「Salesforce.com Summer '05」(セールスフォース・ドットコム・サマー05)を提供開始した。豊富なウェブサービスを統合して自由にアプリケーションを組み立てることができ、ユーザー自身が簡単にカスタマイズすることも可能。利用料金は、プロフェッショナル版が月額1ユーザー7,875円、エンタープライズ版が同1万5,750円、チーム版が年額5ユーザー10万800円。

 Salesforce.comは、マーケティングや営業、サポート部門の業務を支援し、有料顧客を発掘・獲得・維持することを目的としたさまざまな機能をASP形式のサービスとして提供するもの。

 今回の最新版Summer '05は、世界初のオンデマンドオペレーティングシステム「Multiforce1.0」(マルチフォース)、オンデマンドアプリケーションカスタマイズツール「Customforce2.0」(カスタムフォース)、オンデマンドインテグレーションプラットホーム「Sforce6.0」(Sフォース)から構成され、その上でアプリケーションとしてのオンデマンドCRMサービス「Salesforce Summer '05」(セールスフォース・サマー05)やコンタクトセンター向けの「Supportforce Summer '05」(サポートフォース・サマー05)などを利用することが可能。

 7日に東京・六本木ヒルズで開かれた発表セミナーに登場したマーク・ベニオフ会長兼CEOは、「コンピューター利用のアーキテクチャーは、1970年代におけるレガシーのメインフレームから、1990年代にWindowsやUNIXを中心としたクライアント/サーバー型へと変化したが、これからのインターネット時代はオンデマンドサービスに基づくわれわれのアーキテクチャーが主流になる」とし、今回のSummer '05で具体化させた“セールスフォース・オンデマンドアーキテクチャー”(SODA)を紹介した。

 SODAでは、通常のOS(基本ソフト)が占める位置をMultiforceが、アプリケーション統合やデータ統合のプラットホームをSforceで置き換えるという構成になる(写真参照)。このため、業界標準に基づいて開発されたウェブサービスであれば、これらのプラットホーム上で簡単に動作させ、しかもサービス間でシームレスな連携を取らせることが可能。ユーザーインターフェースとして、パソコンのウェブブラウザーだけでなく、携帯電話やPDA、IP電話など、インターネットに接続できてウェブサービスに対応可能なあらゆるデバイスを柔軟に利用することができる。ユーザーはこれまでのようにソフトウエアを購入・インストールするのではなく、ウェブサービスとしてオンデマンドでアプリケーションを利用することになるというのが、ベニオフ会長の考え方だ。

 このアーキテクチャーを最大限に活用したのが今回のSummer '05で、利用者はSalesforceやSupportforceなどの同社が提供するアプリケーションだけでなく、サードパーティーのウェブサービスも利用することが可能。また、開発ツールとしてのCustomforceを用いて、自分のアプリケーションをこの環境に統合して動かすこともできる。カスタムロジックを作成して、業務の自動化を図ることなども容易だという。

 セミナーの中では、グーグルのマップサービスと連携させて、地図上に顧客の所在地をプロットさせたり、NTTコミュニケーションのオンデマンド型IPコンタクトセンターサービスと連携させて、電話によるサポート業務を行ったりするデモンストレーションが披露された。今回のMultiforceでは、画面右上にある「S」のマークのボックスをプルダウンさせることによって、利用可能なサービスのリストが表示されるため、利用者がそれを選ぶだけでそれぞれの業務に適した画面に切り替わるようになっている。

 ベニオフ会長は、「SODAの実現により、業務アプリケーションの世界でもロングテールの理論が当てはまるようになったと思う。これは主要な2割が成果の8割を占めるという法則が崩れてきたといった話しで、具体例としてアマゾン・ドットコムなどはヒット商品だけに依存せず、細かいニッチな商品をたくさん集めることで事業的に成功している。業務アプリの世界では、全体の10%の部分を占める共通的な業務だけがパッケージとして提供されてきた。あとの90%は各社各様の特殊な業務だが、それらをパッケージ化することはビジネスとして見合わなかった。しかし、SODAならアマゾンのようにニッチなサービスを無数に集めることが可能。多くの開発者に新しいビジネスの機会を提供できるとともに、ユーザーにとっても利益が大きい」と述べた。