2005年秋のCCS特集:日本総合研究所

メソスケール領域の統合解析、DPDなどモデラー機能を強化

 2005.12.08−日本総合研究所は、経済産業省プロジェクト「高機能材料設計プラットホームの開発」(通称・土井プロジェクト)の成果をベースにした商用版「J-OCTA」を完成、今年の3月末から販売・出荷を開始している。11月末からは機能強化したバージョン1.1をリリース。メソスケール領域の統合的シミュレーションを世界に先駆けて可能にした土井プロジェクトの実績は広く注目を集めており、J-OCTAの2年目に当たる来年の飛躍が期待されている。

 今回の最新バージョン1.1では、J-OCTAに組み込まれた粗視化分子動力学法「COGNAC」、レプテーションダイナミクス法「PASTA」、動的平均場法「SUSHI」、多相構造シミュレーター「MUFFIN」−の4種類の計算エンジンに対するグラフィック環境がすべて出揃った。

 とくに、COGNACに導入されている散逸粒子動力学法(DPD)をグラフィカルに使いこなすための専用モデラーが追加されたことが目玉で、海外の競合製品にはグラフィック環境がまだ用意されていないことから、先行の利を十分に利用したい考えだ。DPDを使うと、SUSHIと同様に高分子のモルフォロジー(ポリマーの海島構造など)予測を行うことができるが、SUSHIは系を濃度場として記述するため、モルフォロジーの界面部分の濃度分布などがわかるのに対し、DPDでは分子の立体構造を考慮したモルフォロジー解析ができる点が最大の特徴。例えば、分子鎖中の親水基の向きなども知ることができる。

 さらに、SUSHIやDPDで計算した複雑なモルフォロジーの表面形状のデータをエクスポートし、有限要素法(FEM)などの構造解析ソフトに連携させることが可能になった。汎用性のあるNASTRANのバルクファイル形式で書き出すことができるため、FEM側で形状をメッシュ分割して物性などの解析に利用することが可能。

 J-OCTAには解析手順を事例データベースとして蓄積し共有する機能もあり、同社では事例集の作成も進めている。