千葉工大・田辺和俊教授らが化学物質安全性DBを開発

発がん性の有無を10段階評価、未知化合物の予測システムも開発

 2005.11.11−千葉工業大学社会システム科学部の田辺和俊教授らのグループは、信頼性の高い化学物質安全性データベース(DB)システムを開発した。まずは発がん性に関するDBを完成させており、順次その他の毒性情報も追加しながら来年初めにはインターネットで公開する予定。身の回りの数多くの化学物質は、毒性が不明なまま存在しているものも少なくないため、今回のDBは広く注目を集めそう。開発成果は13日から米国メリーランド州ボルティモアで開かれる環境毒性化学会北米年次大会で発表される。

 化学物質の毒性は動物実験によって知ることができるが、既知のデータは世界中の研究機関に散在しており、データの信頼性に問題があったり、DBの形式が多様であったりするために、毒性情報を総合的に調べることは難しかった。

 田辺教授らのグループは、入手可能なすべてのデータを集めて再評価を加え、とくに発がん性に関して約1,000種類の化学物質の情報を集約した。これまでの発がん性DBは発がん性が「ある」か「ない」かの2段階の区別しかなかったが、田辺教授らのDBは元の実験データを精査することで発がん性の有無の信頼度を10段階に格付けすることに成功した。「発がん性があり」で5段階、「発がん性がない」で5段階のクラス分けがなされている。発がん性を10段階で評価したDBは世界でも初だという。

 ただ、DBにない化学物質についてはやはり動物実験を行う必要があるわけだが、田辺教授らのグループはこの点も考慮しており、未知化合物の発がん性を予測するシステムも合わせて開発している。発がん性DBのデータセットをニューラルネットワークに学習させることで、高精度の予測システムを実現した。これにより、動物実験を減らすことができるとともに、身の回りのさまざまな化学物質の発がん性を実際に推測できるようになった。

 今回のDBと予測システムは、千葉工業大学のサイトで一般公開する予定になっており、学会発表を控えてすでに海外からの問い合わせも増えてきているという。