分子機能研究所が完全GUIベースでGaussian/ONIOM法に対応
HyperChem向け拡張ソフトを開発、創薬研究に新たな道
2005.12.28−分子機能研究所(埼玉県三郷市、辻一徳代表)は、加ハイパーキューブの分子モデリングシステム「HyperChem」を用いて、分子軌道法プログラム「Gaussian」を完全なグラフィック環境で利用できるようにするソフトウエアを開発、「Gaussianインターフェース・フォア・HyperChem」および「ONIOMインターフェース・フォア・レセプター」の名称で販売開始した。とくに、Gaussianに内蔵されているONIOM法を簡単に駆使できるようにするソフトは世界でも初めてだという。価格は、通常のGaussianインターフェースが7万円、ONIOM対応版が11万円。
分子機能研究所は、HyperChemをベースに、たん白質のモデリングと医薬化合物との相互作用解析を行うための機能を付加するソフトウエア群を開発しているベンダー。すでに「ホモロジーモデリング・フォア・HyperChem」を製品化し、ハイパーキューブの販売部門であるサイバーケム社を通して米国などでも販売しているが、それに含まれているGaussianインターフェースを単独でパッケージ化してほしいという要望が多かったため、ONIOM法への対応を加えて今回の製品化を実現した。
ONIOM法は、計算対象の分子全体を何層かに分割し、対象によって計算理論を使い分けることにより、たん白質のような大きな系をシミュレーションできるようにする手法。最近人気が出ているが、計算方法が複雑なため、その入力ファイルを準備することは、Gaussianの純正プログラムを使ってもテキスト編集がともなうなど手間のかかる作業だった。
その意味で、今回のONIOMインターフェースは、完全GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)ベースでの自動化を実現。例えば三層に分割する計算では、ターゲットたん白質に結合する医薬低分子をハイレイヤー、その低分子の周囲(4オングストローム以内など)に配置されたアミノ酸残基をミドルレイヤー、それ以外のたん白質分子全体をローレイヤーに設定し、ハイには量子力学、ミドルには半経験的方法、ローには分子力学といった具合に計算方法を割り当てるだけで、ONIOM法の入力ファイルが自動生成される。
この場合、ハイレイヤーとミドルレイヤーをどこで分割するかによってチャージと分子軌道のバランスが崩れてしまうなどの問題が生じることもあるが、今回のソフトは計算対象を医薬分子とたん白質とのクラスターに絞っているため、ミドルレイヤーを低分子周辺の残基と設定することでレイヤーの境界を明確にした。また、リンクアトム情報が自動的に付加されるほか、不足パラメーターも背後でHyperChem(内蔵されているAMBER)を動かすことによって自動的に取得してくる仕組みである。
これまでは、ONIOM法の使い方が難しかったため、こうした実戦的な問題への計算例はほとんどなかったという。 ONIOM法を実際の創薬研究に活用する道をつけたという意味で、市場からの反響が期待される。
ソフト価格は、ONIOMインターフェース・フォア・レセプターが企業向け11万円、アカデミック5万5,000円、ONIOM対応を除くGaussianインターフェース・フォア・HyperChemは企業向け7万円、アカデミック3万5,000円。
なお、今回のONIOMインターフェースを含むホモロジーモデリング・フォア・HyperChemのプロフェッショナル版も発売されている。こちらは企業向け48万円、アカデミック24万円。同社のソフトはすべてモジュール化されているため、差額だけで上位ソフトへアップグレードできる。
このプロ版には、たん白質のホモロジーモデリングを行う際の全自動側鎖モデリング機能が新たに組み込まれている。参照たん白質と異なる配列部分のアライメント情報を読み込み、バッチ計算によってそのアミノ酸残基の安定構造を探索していく。結合角を任意の角度で回して計算することも、既知のロータマーの情報を利用して配座を解析することも可能。計算は全自動であるため、あらかじめどの残基をどの順番で計算していくかを指定できるようになっている。