アスペンテックジャパンが運転方針検討用のオペレーターツール
エクセルの背後でプロセスシミュレーターが作動、収率・性状の変化を予測
2005.12.14−プロセス産業専門IT(情報技術)ベンダーのアスペンテックジャパンは、製造現場のプラントオペレーターがプロセスシミュレーションを実施することにより、運転方針の検討を手軽に行えるようにする新しいソリューションを開発し、販売を開始した。GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)にエクセルを採用しており、流量を変えたり温度を上げたりすると製品の収率がどう変わるかなど、エクセルだけの操作で予測が行えるため、だれにでも使いやすい。プラント設計時に作成したプロセスモデルを利用できるので、最短では数週間から1ヵ月程度で導入できるのもメリット。海外では、2−5%の運転コスト削減に成功した例もある。
今回のソリューションの基盤になるのは「OSEワークブック」と呼ばれる製品。これは、異なるシステム間でプロセスモデルを共有資産として扱うことで統合的なエンジニアリング環境を実現する“OSE”(オープンシミュレーション環境)を実現する具体的製品の第1弾に当たる。
OSEワークブックは、プロセスモデルをエクセルとプロセスシミュレーターの間でいわば共有化させる機能を持つ。エクセルの背後でシミュレーターが自動的に動作するので、利用者にはシミュレーターの知識は不要。また、エンジニア側もVBA(ビジュアルベーシックオートメーション)などのマイクロソフトの開発ツールを知らなくても、エクセルにプロセスモデルを組み込むことができる。
シミュレーターには、同社の定常シミュレーター「AspenPlus」のほか、来年以降はダイナミックシミュレーターの「HYSYS」も利用可能。将来的には他社ソフトや、機器設計ソフトなどのシミュレーター以外のソフトとの連携も実現させる。
さて、実際にシミュレーターをエクセルと統合するためには、「OSEワークブックオーガナイザー」と呼ばれるツールを仲介役として使用する。オーガナイザーの機能がエクセルのツールバーに組み込まれるので、そこからAspenPlusのモデルを呼び出し、ワークシートに表示させたい変数を選んでコピー&ペーストする。そして、ワークシートの任意の位置でテーブル作成モードに入り、実際に表示させたい項目を選んだりカラムの順番を入れ替えたりしたあと、最終的にOKボタンを押すだけ。AspenPlusの入力データにリンクしたセルと計算結果を出力させるセルなどを色分けしたり、項目名をわかりやすく日本語に変えたりするのは、すべてエクセルの通常の操作として簡単に行える。オーガナイザーが仲立ちするため、ソフトがバージョンアップしてもワークシートをつくり直す必要はない。
これにより、ワークシート上で温度や流量などの値を変えてみることにより、背後でAspenPlusが動作し、製品の収率や性状がどう変わるかなどの答えを即座に返してくれる。セル内には実際のプラントデータを吸い上げて表示することもできるので、現実のプラントの状態に即したシミュレーション検討を簡単に行うことが可能。プラントオペレーターの座右のツールとして日常的に使用することができる。
また、従来のプロセスモデルは設計時に使われただけで死蔵されてしまうことが多かったが、今回のソリューションのように運転時にも活用できるようにすることで、これまでのIT投資の価値をさらに高めることにもつながるという。
同社のロードマップでは、現在は“オフライン運転モデル”として運転方針の検討に利用するスタイルとなるが、将来的にはプラントの実データをリアルタイムに近いかたちで解析して経済性などを考慮した最適化を図る“リアルタイムモデル型”、さらには高度制御プログラムと組み合わせて最適プロセス条件でプラントを自動運転させる“リアルタイム最適化運転モデル型”までの発展を視野に入れているようだ。