リナックスネットワークスがLinuxベースのスーパーコンを発売

特定アプリケーションに最適化した専用機として提供、TCOで大幅なメリット

 2005.12.09−リナックスネットワークス(本社・東京都港区、中曽根悟社長)は8日、Linuxベースのスーパーコンピューター「LSシリーズ」を国内で本格的に販売開始すると発表した。業界標準のコンポーネントを組み合わせることで本格的な性能を安価に提供できることが特徴。最大100テラFLOPS(1テラFLOPSは毎秒1兆回の浮動小数点演算)までのスケーラビリティーを持つ「LS/X」と、使いやすいミッドレンジの「LS-1」の2機種があり、自動車やライフサイエンスなどの分野に売り込んでいく。

 米リナックスネットワークス(本社・ユタ州)は1989年設立で、1997年からLinuxクラスターの開発を事業として推進してきている。記者会見したディーン・E・ハッチングス社長兼COOによると、同社は1997年に世界で初めてLinuxクラスターを商用化した企業(納入先は米ブルックヘブン国立研究所)として知られており、2001年には当時のスーパーコンピューター世界ランキングでLinuxクラスターとして初めてトップ10入りを果たし、最高で第3位に輝いた実績を持つという。

 同社のマシンは単純なクラスターではなく、特許の冷却技術“Evolocity”、インフィニバンド技術を利用したケーブルレスのスイッチングアーキテクチャー“ブリッジャースイッチ”の搭載、専用の管理ソフトウエア“クラスターワークス”など、高性能を支える独自技術が随所に盛り込まれている。

 さて、今回の新製品のうち、LS-1は特定用途向けの一種の専用機として提供されるマシン。ユーザーが1つあるいは数種類の利用したいアプリケーションをあらかじめ決め、同社がふさわしい構成やチューニングを施して最適化されたシステムに仕立てていく。このため、ユーザーは設置後すぐにアプリケーションを稼働させることが可能。通常のクラスター導入にかかわる組み立てや調整、最適化などの手間や時間、余計なコストがまったくかからないので、TCO(総所有コスト)の点で大幅なメリットを提供できる。

 具体的なアプリケーションとしては、流体解析のFLUENTや構造解析のANSYSなどが正式パートナーとなっているが、計算化学分野でも分子軌道法のGaussianやGAMESS、分子動力学法のAMBERなどを利用することができるという。

 ハードウエアとしては、オプテロンあるいはジーオンをCPU(中央処理装置)に採用しており、OS(基本ソフト)にはノベルのSUSE Linuxを組み込んでいる。システム価格は約60万円から数千万円までのレンジとなっている。

 一方、上位機のLS/Xはオプテロンの4ウェイ構成を1ノードとし、1ラックに24ノードを搭載することが可能。本格的なスーパーコンピュータークラスの性能を数10分の1のコストで実現しているという。実績ベースで5,000CPUのスケーラビリティーを実現した例があるという。

 ハッチングス社長によると、今年の同社は四半期ごとに過去最高の業績を記録しており、数年前まではほとんどが政府系研究機関だった実績も、現在では55%が民間産業界での導入となっている。このため、今回のLSシリーズで本格的にスーパーコンピューター市場に参入し、さらに民間での販売を伸ばしたい考え。国内では、2001年に日本法人を設立し、50システムを超えるクラスター納入実績を築いてきているが、LSシリーズ発売を機にさらなる戦略強化を図っていく。