米マイクロソフト:スティーブ・バルマーCEOが来日会見

広範囲で“イノベーション”を推進、Liveサービスの収益性に自信

 2005.11.17−米マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)が来日し、16日に都内で記者会見を行った。同社の日本法人は今年が設立20周年であり、「日本発の創造性や革新がいまのマイクロソフトの発展に大きく寄与した。日本人はIT(情報技術)を愛し、技術革新を積極的に受け入れる国民であり、日本はこれからも当社の成長にとって最も重要な市場であり続ける。デジタルライフスタイルとデジタルワークスタイルの両面でさらなる革新を提供したい」と述べた。

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 会見の中で、バルマーCEOは、「当社のドットネット技術は、世界の大企業の90%以上で採用されており、Windowsサーバー2003もサーバー向けOS(基本ソフト)出荷の65%以上を占めている」と最近の成功を強調した。

 とくに、先ごろ米国で発表された「Windows Live」と「Office Live」のサービスについて、「インターネットを介したソフトウエアベースサービスというビジネスモデルは非常に大きなポテンシャルを秘めている。基本的には、新しい顧客に対して新たな価値を提供することを目指しており、現在のパッケージ主体のビジネスを補完し、プラスアルファの売り上げを生み出すものだ」と説明。ドル箱であるWindowsやOfficeの機能をサービスとして無償提供することによって、同社の収益面でマイナスになるのではないかとする懸念を払拭した。

 「サービスを支えるためのオンライン広告収入がかなり期待できるし、オフィスに関してはサブスクリプションモデルも予定しているので、結果的にはむしろ収益増に貢献できる」と述べた。

 また、来年の今ごろ登場するとみられる次期デスクトップ「Windows Vista」については、「あらゆるデジタルデータを自由にコントロールする機能を持っており、大きな期待を持って市場に受け入れられると思う」と自信をみせた。

 日本での発売が12月10日に迫っている新型ゲーム機 Xbox360に関しては、旧機種が日本で利益を生み出さなかったことを認めつつ、「ゲームコミュニティのレスポンス、ゲームユーザーの反応をみても、今回はかなり勢いがある。日本のゲーム業界の期待の大きさも感じており、黙っていても旧機種より成功するのは明らかだが、さらなる積極策を講じることで確実に利益を出したい」とコメントした。

 そのほか、会見中のダレン・ヒューストン日本法人社長のプレゼンテーションの中で、日本市場に対して基幹業務アプリケーションを投入する計画が正式に示された。「Microsoft Dynamics」(マイクロソフトダイナミクス)と呼ばれている製品で、来年前半にまずはCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)、来年中にERP(エンタープライズリソースプランニング)パッケージを発売する予定。

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 バルマーCEOは、この会見後に、東京プリンスホテルで開催された「マイクロソフトパートナー総会」でも講演した。集まった750人のパートナーを前に、「マイクロソフトの成功は、いつもパートナーシップを通して達成されてきた。その意味でみなさんに心から感謝したいし、われわれはこれからもパートナーシップに全力でコミットメントしていく」と表明。

 バルマーCEOは講演全体を通して“技術革新”の重要性を訴え、「イノベーションによってビジネスが成長しなければ意味がない。マイクロソフトは、デジタルライフスタイルとデジタルワークスタイルの両面でイノベーションの範囲をさらに広げており、そのために巨額の投資を行っている。パートナーのみなさんはそのイノベーションの上で積極的にビジネスを拡大していただくとともに、みなさんのビジネス自体もイノベーションさせることを目指して励んでほしい」と話した。

 具体的な製品への言及では、「1年ほど先にはWindows VistaとOffice12が登場するが、多くのパートナーのみなさんにはOffice12が大きなビジネスチャンスになると思う。VoIPに進出することができるし、ワークフローやビジネスインテリジェンスの機能も組み込まれている。バックエンドとフロントエンドの両方で新たな価値を生み出していただける」。また、「いままではハードウエアの革新にソフトウエア技術を組み合わせることでさまざまなイノベーションがもたらされたが、今後はインターネットを通じたサービスが新たなイノベーションを生み出す可能性がある」とし、Windows LiveとOffice Liveへの期待を示した。「このソフトウエアベースサービスでは、新しいビジネスモデルをみなさんとともに進化させていきたい」と述べた。

 さらに、「私はマイクロソフトに入社して25年になるが、わが社の将来に対していまほどわくわくした気持ちを抱いたことはなかった。広範囲にわたるイノベーションのパイプラインがはっきりとみえているからで、どうかわれわれの研究開発力に大きな期待を賭けていただきたい」として講演を締めくくった。