ベストシステムズがMolWorksにグリッド対応機能を付加

Gaussianなどを遠隔・並列に実行、今夏に無償提供を開始

 2006.03.02−ベストシステムズ(本社・茨城県つくば市、西克也代表取締役)は、グリッドコンピューティング環境への対応を実現した国産コンピューターケミストリーシステム(CCS)として、今年の夏を目標に「MolWorks+G」を開発する。処理の重い量子化学計算などをネットワーク上で分散させることによって、計算速度を大幅に高めることが可能。化学系研究者の身近なツールとしての普及を優先させるため、無償のソフトとして公開する。グリッド対応で使い勝手が良くなるため、幅広いユーザーの注目を集めそうだ。

 MolWorksは、産業技術総合研究所など国内の研究者が作成した自作プログラムを集めてつくり上げたシステムで、分子構造のモデリングから理論化学計算の実行と計算結果の解析、原子団寄与法に基づく物性推算、化学工学計算まで一通りの機能を備えている。2002年にリリースしたバージョン1.7から無償で提供するようになった。

 現在のバージョンは2.0で、量子化学計算ソフトの定番であるGaussianの入力ファイルを作成し、同じマシンにGaussianがインストールされている場合は、これとダイレクトに連携させることが可能。 Gaussian対応の無償GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)ソフトとして使用するユーザーも多い。最近でも、国内・海外を合わせ、月平均で150本程度がダウンロードされているという。

 同社では、今年の夏を目標に、バージョンを2.1に上げ、同時にグリッド対応機能を付加して「MolWorks+G」として製品化する計画。機能強化を続けることで将来は有償のソフトにする計画ではあるが、今回も引き続き無償で提供していく。

 このグリッド対応機能は、昨年に米マサチューセッツ州ボストンで開催された「The GlobusWORLD 2005」において、理化学研究所と共同発表した技術成果を具体化したもの。GlobusツールキットやCoGキットなどの業界標準のグリッドコンピューティング基盤技術を下敷きにしており、ネットワークに分散したコンピューター資源にシームレスにアクセスすることが可能。とくに、遠隔のマシン上に存在するGaussianやQ-Chem、MOPAC、GAMESSなどの量子化学計算ソフトを手元のMolWorksから起動させ、計算結果を取得できるようにする。

 バージョン2.1でZマトリックス対応機能も追加されるため、同社ではとくにGaussianとの連携でさらに人気が出ることを期待しているようだ。

 なお、MolWorks関連の最近の動きでは、内蔵されている物性推算機能を使って計算した結果を集めた「分子推算物性データベース」(CPDB)の公開(http://www.aist.go.jp/RIODB/cpdb/)がスタートしている。あらかじめ推算された物性を参照することで計算時間を節約したいという要望にこたえて開発したもので、25万件以上のデータを収録。推算済みの物性は、沸点、凝固点、臨界温度、臨界圧力、臨界体積、偏心係数(Edmister法およびLee-Kesler法)、臨界圧縮係数、密度、蒸気圧、蒸発熱、Chemkin入力用衝突断面積、Chemkin入力用井戸型ポテンシャル−の13種類。望ましい物性を持つ化合物のスクリーニングに役立つデータベースを目指して発展させていくとしている。