富士通がCACheの最新バージョン7を発売
計算エンジンを強化、MOS-F新搭載とLocalSCF機能追加
2006.03.27−富士通は、汎用分子設計支援システム「CAChe」の最新バージョン7を開発、きょう27日から販売開始する。計算エンジンを機能強化しており、富士通研究所で開発された可視光・紫外線の吸収波長計算プログラム「MOS-F」を新たに搭載したほか、たん白質分子全体の構造最適化を高速に行える独自の「CAChe LocalSCF」も計算できる対象を広げた。きょうから30日まで千葉県船橋市習志野台の日本大学理工学部船橋キャンパスで開催される日本化学会春季年会の付設展示会で初公開する。来年3月末までに国内・海外合わせて3億円/160本の販売を見込んでいる。
CACheは、分子モデリングのための使いやすいグラフィック環境と、理論化学計算のための計算エンジン群を統合したシステムで、化学・材料・製薬分野における分子設計に幅広く利用することができる。
とくに、今回のバージョン7は計算エンジンの強化がポイント。分子の励起状態を計算できるエンジンとして従来はZINDOを採用していたが、今回はこれに加えてMOS-Fが利用できるようになった。精度の高いRPA法による励起状態計算が可能で、可視光・紫外線吸収スペクトルや超分極率など、ZINDOが対応していなかった分子の特性を高速に求めることができる。とくに、MOPACのPM5パラメーターを使うことによって、実測値との相関に優れた計算結果が得られることが確認されており、機能性色素などの発色関連の機能をメインとした材料研究に威力を発揮するという。
一方、ローカルSCF(局所自己無撞着場法)は、ロシアのN・A・アニキン教授らが理論化し、富士通が初めてプログラム化した半経験的な計算手法で、20万原子といった巨大な生体分子の系を効率良く解析することが可能。主に、たん白質と医薬分子との結合親和性の解析・評価のために利用されるが、今回の機能強化によって、アミノ酸からなるたん白質だけでなく、塩基によって構成されるDNA分子も含めた構造最適化が行えるようになった。鉄原子などd軌道を含んだ計算にも対応可能。このため、DNAとの相互作用に着目する抗体医薬などの分野にも用途が広がった。
CACheファミリーのパッケージは、配座探索のCONFLEXや密度汎関数法DGaussをはじめとするオプションを含んだフル構成の「CAChe Worksystem Pro」(280万円、教育機関向け80万円)、標準構成の「CAChe Worksystem」(210万円、同60万円)、半経験的分子軌道計算を中心とした「Quantum CAChe」(140万円、同40万円)、エントリーシステムの「Personal CAChe」(70万円、同20万円)に分かれている。今回、Personal CAChe以外にはMOS-Fがバンドルされる。また、「CAChe LocalSCF」(400万円、同150万円)は別売りオプションとなる。動作環境はWindows2000/XP。