富士通が化学者向けデスクトップスイートChemOffice最新版を発売

ChemDrawなど新機能満載、高度なサポート力を武器に拡販

 2006.03.01−富士通は、化学研究者向けデスクトップスイート製品の最新版「ChemOffice 2006」を4月1日から発売する。米ケンブリッジソフト(CS)が開発した製品で、構造式作画、分子モデリング、化学情報データベース(DB)、電子実験ノートなどのさまざまなツールがセットになっている。同社では、とくに個人向けから企業ユースまで充実したサポート力を武器に、年間3億円の売り上げを見込んでいる。

 富士通は1995年からCS製品を販売しており、これまでに1万ユーザー/約5万本の販売実績をあげている。同じソフトを販売する代理店がいくつかあるが、日本語マニュアル(1,400ページ超)の監修を担当するなどの高い技術レベルとサポート力、さらにはエンタープライズ版の導入にともなうシステムサポートなどを差別化要因として事業展開している。一方的にCS製品を代理販売するのではなく、逆に半経験的分子軌道法ソフトMOPACをCS社にライセンスするなど、相互補完の関係にある。毎年のユーザー会も共同で開催している。

 さて、今回の「ChemOfficeウルトラ2006」(58万9,000円)には、構造式作図のChemDrawウルトラ、三次元モデリングのChem3Dウルトラ、化学DB管理のChemFinderウルトラ、統計解析ツールのBioViz、アッセイデータ管理のBioAssayウルトラ、試薬在庫管理のInventoryウルトラ、電子実験ノートのE-Notebookウルトラ−などが含まれたデスクトップスイートのフルパッケージ版。それぞれのバージョンは10.0となる。Windows対応だが、ChemDrawだけがMacOS Xでも動作する。

 また、ChemFinderで利用できるDBコンテンツとして、35万以上の試薬を収録したChemACX、7万8,000化合物の低分子物性DBであるChemINDEX、医薬品の情報を集めたメルクインデックス、NCI(国立がん研究所)の治験DB、MSDS(製品安全データシート)のChemMSDXなどが付属している。

 機能面の特徴をいくつかみていくと、まずChemDrawはファイル形式として最新のMOLファイル V3000フォーマットをサポートした。新機能としては化学量論計算機能がある。反応式を記述するだけで、化学量論に基づいて自動的に反応物と生成物の量的関係を計算できるスプレッドシート風の表が立ち上がる。目的の生成物を効率的に得るために原料のモル数をいくらに調節すべきかなど、数字を入れ替えながら自動計算して最適な量を探ることができる。構造式からのIUPAC命名法として、新しいInChI法に対応したことも特徴となっている。

 さらに、日本語Windows環境での動作に不具合があったため、日本での発売が見送られていたBioDrawの機能がChemDrawの中に組み込まれた。“BioDrawツール”として作図パレットを呼び出すことによって使用できる。生物学的パスウェイなどのバイオ系の作画を簡単かつスマートに行うことが可能。

 ChemFinder関連では、統計解析ツールBioVizが強化された。DB検索後に、その結果を利用して任意のデータ項目で相関グラフを描くことができる。簡単なデータ解析機能やフィルタリング機能が搭載されているため、エクセルなどにデータをエクスポートする手間をかけずに、ChemFinder内で簡易統計解析が行えるようになった。

 Chem3Dでは、GaussianやGAMESS、MOPACなどとの連携が強化され、それぞれの計算結果を利用して解析できる物性などが大幅に増えている。GaussianでIRスペクトルなどを予測した場合、計算後にスペクトル図まで自動的に表示してくれる。また、たん白質などのバイオ系の分子グラフィック機能も高度化しており、表現力が高まった。さらには、ChemDrawとインタラクティブにシンクロする機能が盛り込まれたため、二次元と三次元で交互に作図したりすることが可能。例えば、二次元上で結合や原子を書き加えると、その変化が即座に三次元モデルにも反映される。

 E-Notebookは、テンプレート、自動化学量論計算、オートテキスト、ChemDraw新機能などの強化によりさらに使いやすくなった。ワードやエクセルの内容までも含めて全文検索が可能で、ノートブックの履歴・変更履歴の完全監査・証跡、電子サイン機能も追加された。

 今回のデスクトップ版に続いて、エンタープライズ版も順次リリースされる予定で、富士通としては全社導入などの大型案件につなげていきたい考えだ。