NECがMDサーバーの1号機を三和化学研究所から受注

ラックマウント型を設置、MDソフトとしてprestoXを稼働

 2006.03.14−NECは、新薬開発を支援する分子動力学法(MD)計算専用サーバー「Express5800/MDサーバー」の第1号機を三和化学研究所(本社・名古屋市)に納入した。設置したのはラックマウント型1台だが、通常のPCクラスター250台分の性能を発揮する。三和化学研究所は糖尿病関連を中心とする医療用医薬品メーカーで、今回のMDサーバーを創薬ターゲットたん白質の立体構造解析や、医薬候補化合物との結合シミュレーションなどに利用していく。

 MDサーバーは、MD計算の99%以上を占めるクーロン力や分子間力などの非結合計算を専門に処理するためのアクセラレーターボード「MDエンジン」(1枚に4個の専用プロセッサーを実装)を搭載したマシンで、昨年11月末に発売された。タワー型とラックマウント型が用意されており、いずれも本体内に3枚のMDエンジンが装着される。

 その高速性を生かし、カットオフ近似(離れた原子間の非結合力を計算しない)をせずに、溶媒中のたん白質分子全体の構造をシミュレーションできることが最大の特徴。三和化学研究所は、10年以上前から計算化学を用いて、たん白質立体構造に注目した合理的創薬の研究を進めてきていた。それだけに、MDサーバーの圧倒的な高速性に期待が大きいようだ。とくに、水分子を含めた3万−5万原子の系を1週間以内で計算したいというのがひとつの目安だったという。

 また今回の導入事例では、MDプログラムとして標準の「AMBER」ではなく、大阪大学蛋白質研究所の中村春木教授らのグループが開発した「prestoX」(http://www.jbic.or.jp/presto_x/index_px.html)を利用したいというユーザー側の要望にNECが対応した。カットオフなしの立体構造計算を高精度に実施することで、新規活性化合物発見の可能性が広がるものと期待される。

 NECでは、今回の1号機導入を弾みに、創薬支援ソリューションの普及に一段と力を入れる考え。MDサーバーによるたん白質構造解析に加え、化合物とのドッキングシミュレーションやバーチャルスクリーニング、ADME(吸収・分布・代謝・排出)毒性予測、化合物分子の構造最適化など、研究ワークフローをトータルに支援できるコンピューターシステムの提供を目指していく。