富士通が三次元CADソフトSolidMXをオンデマンドで提供

発展型サービスとして新たにスタート、柔軟な顧客対応目指す

 2006.02.03−富士通は2日、業務アプリケーションをインターネット経由でサービスする“アプリケーションオンデマンド”事業を本格的にスタートすることとし、第1弾として三次元CADソフト「SolidMX」を提供開始すると発表した。同社の「オンデマンドアウトソーシングサービス」は、サーバーやストレージ、ネットワークなどインフラ系の資源をオンデマンドサービス化することで成長してきたが、今回はその発展形としてアプリケーションまでもメニューに加えた。顧客のきめ細かな要求にこたえる点で、ASP(アプリケーションサービスプロバイダー)よりも柔軟なサービス実現を目指していく。

 SolidMXは、自社開発の二次元/三次元CADで、1,900社/2万シートの導入実績を持つ。昨年6月にイントラネットサーバー集約型のシンクライアント対応版を開発しており、今回はこれをオンデマンド環境で利用できるようにした。設計業務は、特定の期間に業務が集中し、一時的に大量の資源を消費する傾向があることから、第1弾のサービス分野にふさわしいと判断したという。

 同社独自のデータ圧縮技術により、巨大な三次元データを扱っても通常のブロードバンド環境で十分なレスポンスを達成。1ヵ月単位で契約できるため、急な業務量増加にも柔軟に対応できる。また、機密性の高い設計データが、高いセキュリティを備えた富士通のデータセンター内に保存されるため、情報漏えい防止の観点からもメリットがあるとしている。

 同社の考える“アプリケーションオンデマンド”サービスは、アプリケーションおよびシステム資産を、運用・保守と合わせて必要な時に必要なだけ利用できるサービス形態。ASPサービスとの相違点としては、ハードウエア環境を顧客要件にしたがって設計できること、決められたものだけでなく顧客が指定したアプリケーションを提供できること、顧客要件に合わせたSLA(サービスレベルアグリーメント)とそれに基づく顧客別課金体系が可能なこと−などがあげられる。(別表参照)

 記者発表した石田一雄アウトソーシング事業本部長は、「コストによる値付けをそろそろやめたいという狙いもある」と話す。「バリューに対して対価をいただきたいというのが基本的な考え方だ。ベンダー側からの仕様としてのSLAではなく、顧客の業務に焦点を当てた顧客本意のBLA(ビジネスレベルアグリーメント)に基づいて正当な値付けをする。われわれの業界もそろそろこういうことに取り組むべきだ」とした。

 なお、今回のSolidMXのオンデマンド使用料金は、月額16万5,000円からで、シンクライアント版を社内導入するよりもTCO(所有総コスト)で20%ほど安くなるという。今後3年間で100社/100億円の販売を見込んでいる。 SolidMXに続いては、設計データ管理のPLEMIA、仮想試作システムVPSなどのPLM(製品ライフサイクル管理)アプリケーションを展開していく予定。

アプリケーションオンデマンド:従来モデルとの違い

記者発表での富士通の資料から

    パッケージ販売 ASPサービス アプリケーションオンデマンド
ハードウエア 設計 顧客要件設計可能 顧客要求設計不可(ASP対応ソフトに依存) 顧客要件設計可能
  環境 顧客側に設置(1社占有) ベンダー側データセンターに設置(複数社共有) ベンダー側データセンターに設置(準共有、専用対応可能)
ソフトウエア 対象 パッケージ化ソフトのみ ASP化ソフトのみ(ベンダー指定) 顧客業務アプリ・パッケージ等(顧客指定)
  思想・適用技術 パッケージ製品に依存 ウェブインターフェース、分散共有型アプリケーション(ウェブサービス化・オブジェクト指向・セキュリティ技術等)
  アップグレード 大規模少頻度のアップグレード(顧客別バージョン管理要) 小規模多頻度のアップグレード(顧客別バージョン管理不要)
サポート   構築・インストール・メンテ・監視・トラブル対応は顧客責任 資産提供・インフラ運用・アプリメンテ・トラブル対応を一括提供(スピード対応・サポートコスト低減)
課金・契約   ライセンス販売 固定の料金体系(サービス仕様としてのSLA) 柔軟な課金体系(顧客要件別SLAが可能)
ターゲット市場   中小企業から大企業 中堅市場 中堅市場から大企業