ElsevierMDLが新プラットホームIsentrisへの移行を加速

試薬管理システム日本語版が完成、参照系アプリからの段階的移行を提案

 2006.09.14−ElsevierMDL(エルゼビアMDL)は、具体的な業務アプリケーションをそろえ、新しいプラットホーム製品である「Isentris」への移行を国内で本格的に進める。9月7日と8日の2日間、新神戸オリエンタルホテルで日本ユーザー会が開催されたが、その場で実際の機能や使い勝手をアピール。とくに、国内の大手製薬企業と共同開発した試薬管理システム「MDLロジスティクス」の日本語版が初公開され、注目を集めた。今年の第4四半期にはIsentris2.0のリリースが予定されており、来年に向けてアプリケーション主体に攻勢をかけていく。

 Isentrisは、医薬品の研究開発の幅広いステージで使用する各種の情報やコンテンツ、ワークフローや業務プロセスを統合するプラットホーム製品で、マイクロソフトのドットネットをはじめとする最新のIT(情報技術)標準に対応していることが特徴。

 今回の日本ユーザー会には約100人の参加者があり、5月に開かれた米国ユーザー会よりも大きな規模となった。 Isentrisを基盤にした具体的なアプリケーションが出そろったことに対するユーザーの高い関心を示したものといえそう。

 とくに、日本語版が初めて披露された「MDLロジスティクス」は、参加者が実際に操作できるハンズオンも実施され、多くの注目を集めた。画面が完全に日本語化されており、国内の法規制に対応。ウィンドウの左肩には「試薬の検索」、「在庫管理」、「法規制管理」、「リクエスト管理」、「レポート」などのタスクリストが表示されるフレームがあり、そこから作業を選んで画面のガイドに従うことによってだれでも簡単に操作できることが示された。

 例えば、「法規制管理」を選ぶと、「法規制試薬リスト作成」、「法規制オーバーライド作成」、「法規制ユーザーグループ作成」、「法規制試薬リスト編集」、「法規制オーバーライド編集」、「法規制ユーザーグループ編集」、「監視管理」など、さらに細かな作業リストがあらわれる。実際の操作は、タブで項目を切り替えたり、“次へ”ボタンを押して先へ進めたりするスタイルで直感的にわかりやすい。

 ACDなどの試薬データベースを含めたMDLの豊富なコンテンツと統合されており、SAPやアリバなどの購買システムとの接続も可能。企業ごとの特異な業務フローに対応できる柔軟性も備えている。今回のユーザー会では、実際に共同開発を行ったユーザーからの発表もあったが、「初めて本格的に日本語製品をつくろうとするMDLの意気込みに打たれた」というコメントが印象深かった。

 また、電子実験ノートブックの「MDLノートブック」、化合物データ登録システム「MDLレジストレーション」も高い完成度をみせている。電子ノートは、豊富なコンテンツとの統合や既存プラットホーム製品であるISISとの連携など、実戦的なシステムを容易に構築できる点で競合製品よりも優位にあるという。

 同社では、このほど米国に“サンドボックス”と呼ばれるサーバーを設置し、遠隔からこれらのアプリケーションを評価できる環境を用意した。サンドボックスは子供が遊ぶ“砂場”のことで、ユーザーが自由にシステムを操作して楽しめるという意味を込めたネーミングだという。MDLロジスティクス日本語版もネットワーク経由で試用することが可能で、同社日本法人では受注拡大への新兵器として積極的に活用することにしている。この日本語版はすでに本格的な販売活動に入っている。

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 同社の製品ロードマップによると、年内にISISの主要機能のIsentrisへの移行がほぼ完了する。これを受け、今回の日本ユーザー会において、同社から具体的な移行方法についての提案が行われた。既存のISISベースのシステムを登録系アプリケーション(化合物登録、試薬管理、評価情報管理など)と参照系アプリケーション(化合物データベース検索・閲覧など)に分け、システム化の考え方の変化を求めた。

 つまり、過去においては一般的に登録系を優先してシステムが組まれたため、データウェアハウスやデータマートを仲介させて参照系を運用することになり、ユーザーのアドホックな情報要求に対応するための運用管理面の負荷が大きくなっていたと分析。このため、Isentrisへの移行に際しては、参照系を優先することとし、参照要件から登録要件を洗い出すかたちでシステム構築を行うことが望ましいのではないかと提案した。

 具体的には、まずデータベース層をISISのRCGからIsentrisのピュアカートリッジへと移行したあと、参照系アプリケーションをIsentrisベースに移行・再構築する。参照系はIsentris、登録系はISISという一定の共存期間を経て、最終的に登録系アプリケーションを順次Isentris環境へと移していく。

 ただ、実際の移行プロジェクト実施に当たっては、個々のユーザーの意向や実情を勘案する必要があるほか、システムインテグレーターの支援も不可欠になる。今回のユーザー会の中では、同社のパートナーのうち、CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)と新日鉄ソリューションズが移行支援に名乗りをあげていた。