マイクロソフトが業務アプリケーション市場に本格進出

9月にまずCRMを提供、パートナー戦略主体に中堅・中小市場を開拓

 2006.07.26−マイクロソフトは、国内市場で本格的に業務アプリケーション分野に進出する。「Microsoft Dynamics」(マイクロソフトダイナミクス)の商品名で、9月にCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)、来年4月にERP(エンタープライズリソースプランニング)を発売する。実際には、これらの製品をベースに、システムインテグレーターなどのパートナーがユーザー固有の要件を盛り込んだソリューションに仕上げて販売する。中堅・中小企業、大企業の部門システムをターゲットにしており、マイクロソフトの基盤製品群やオフィス製品群との親和性が特徴になる。パートナーを含めた全国展開による物量作戦で、粘り強く地道に普及を図っていくことにしている。

 マイクロソフトは、デンマークのナビジョン社と米グレートプレーンズ社を買収し、欧米ではERPで4製品をラインアップ。また、自社開発のCRMがあり、現在はこの5製品で「Microsoft Dynamics」を構成している。いずれも中堅・中小企業向けの製品になる。

 このうち、日本市場に対してはCRMの「Dynamics CRM」を今年の9月に、ERPではナビジョン社の「Axapta」をベースにした「Dynamics AX」を来年4月にリリースする予定。ERPを1種類に絞るのは、将来的に4つの製品を1つか2つに統合する計画であることと、その中でAXがベースになりそうなアーキテクチャーを採用していることなどが理由だとしている。

 同社のこれまでのビジネスと同様、基本はパートナーとの連携を重視する考え。システムインテグレーターやコンサルティングファーム、パッケージソフトベンダーなどが、それぞれのノウハウを用いて「Dynamics」上でソリューションを構築したり、自社の製品やサービスを「Dynamics」と連携させたり、「Dynamics」を自社製品に組み込んだりするかたちで、パートナーが自由にビジネスを展開できるようにする。マイクロソフト自身は、それに対するサポートやトレーニングなどの後方支援に回る。また、地方を含めて全国をきめ細かく網羅し、プロモーションやマーケティング活動を推進していく。

 さて、第1弾の「Dynamics CRM」だが、バージョンはすでに3.0となっており、CRMおよびSFA(セールスフォースオートメーション)のための一通りの機能を備えている。営業マンの仕事を増やすのではなく、自然に仕事の役に立つようなシステムを目指しているとしており、オフィスソフトとの親和性が最大の武器。例えば、アウトルックでのメールのやり取りやスケジュール管理を営業案件とリンクさせることにより、通常業務の背後でCRM機能が適切に働くようになっている。データ分析なども使いなれたエクセルで行えるため、利用者はCRMの存在をほとんど意識しない。ただ、すべての情報はサーバー上で一元管理されているため、オフィスソフトとの連携は有機的になされる。

 ライセンス体系や価格、具体的なパートナーなどについては、9月7日に予定されている正式な製品発表会で明らかにされる。

 なお、中堅・中小向けCRMは、セールスフォース社などのオンデマンドサービス型の人気も高いが、マイクロソフト自身がサービスに乗り出すことはないものの、次期バージョンではホスティング業者がサービスとしてCRM機能を提供できるように対応する予定があるという。