アドバンスソフトがAdvance/バイオステーション2.0をリリース

マルチレイヤーFMO計算に対応、精度落とさず高速計算を実現

 2006.12.06−アドバンスソフトは、たん白質と医薬分子(リガンド)との相互作用を解析する「Advance/バイオステーション」を機能強化し、最新バージョン2.0をリリースした。古典力学に基づいた一般的な解析システムと異なり、フラグメント分子軌道法(FMO)の採用によって電子状態を考慮できることが特徴だが、今回の最新版では新しい多層化計算手法を導入し、計算精度と計算速度のバランスを最適化することができるようになった。ソフトの価格は、年間ライセンスで一般向け100万円、教育機関は50万円。

 Advance/バイオステーションは、文部科学省プロジェクトとして推進中の「革新的シミュレーションソフトウエアの研究開発」(RSS21)の成果を商用化したもの。無償公開版のバージョンは3.0だが、今回の最新商用版はそのすべての機能を包含し、さらに糖鎖を対象にした機能が追加されている。大規模な計算を途中からリスタートする機能も持つ。

 とくに、計算エンジン部分の最大の強化点は、高精度なMP2計算に対応したうえで、マルチレイヤーFMO法を実装したこと。リガンドとその周囲のアミノ酸残基など、たん白質のターゲットとなる領域の電子状態をFMO-MP2で精密に解析し、それ以外の部分をFMO-HF(ハートリーフォック)で簡易計算することができる。MP2で高精度の基底関数を用いると、計算時間はHF法の20倍にふくらむといわれているが、今回のマルチレイヤー化によって肝心な部分の精度を落とさずに全体の計算時間を短縮することが可能になる。

 また、今回のバージョン2.0では、“VISCANA”と呼ばれる新機能が搭載された。これは、FMO計算のフラグメント分割(アミノ酸残基または低分子をフラグメントという計算単位に分割する)を利用して、たん白質(活性中心周辺のアミノ酸残基)とリガンドとの相互作用エネルギーのパターンを用いた階層的クラスター解析を行うもの。たん白質との相互作用様式が似通った一群のリガンドをクラスタリングすることができる。わかりやすい可視化機能を用いて、どのような分子が結合しやすいのかを簡単にクラス分類することができる。