米トライポスがCCSソフトウエア事業を売却
ベクターキャピタルに2,560万ドルで、SYBYLなどは存続の見通し
2006.11.28−米国の大手CCSベンダーであるトライポス社が20日、ソフトウエア事業部門をベクターキャピタルに2,560万ドルで売却すると発表した。来年3月末までにはすべての手続きが完了する予定。トライポスは今年の1月から買い手を探しており、米国では今回の売却は会社清算の一環との見方も出ているようだ。ただ、事業は何らかのかたちで継承されるため、SYBYLなどの代表的なソフトウエア製品は存続すると思われるが、国内でもユーザーが多いだけに今後の行方が注目される。
トライポスは1979年の設立。米国で最も古いCCSベンダーの1社(現ElsevierMDLのモレキュラーデザイン社が1978年設立、現アクセルリスのバイオシム社が1984年設立)で、NASDAQ市場に上場している公開企業である。
事業としては、分子モデリングシステムとして長い歴史を持つ「SYBYL」、実験研究者向けの「ベンチウエアシリーズ」といったラインアップを擁するディスカバリーインフォマティクス(DI)事業と、専門の研究設備を利用した受託研究を行うディスカバリーリサーチ(DR)事業−が両輪となっている。
今年9月末までの9ヵ月間の実績をみると、売り上げは前年同期40%減の2,503万3,000ドルと大きく落ち込んでいるが、DI事業は5%減の1,776万3,000ドルにとどまっており、前年同期の2,084万2,000ドルから434万7,000ドルへと急落したDR事業が大きな影響を与えたことがわかる。9月期の収益は、前年同期の95万2,000ドルの黒字から911万6,000ドルの赤字へと転落している。
今回のベクターキャピタルとの合意は、このDI事業を2,560万ドルで売却するというもの。トライポスにはDR事業が残ることになるが、続けてこれも売却したい意向だと伝えられており、完全に売却されると株主に対して総額で600万−1,200万ドルの還元が図られるということだ。
ベクターキャピタルは、これまでにLANDeskソフトウエア社やAvocent社、Saviテクノロジー社をスピンアウトさせた経験があり、現在はウォッチガード社やコーレル社も所有しているという。
CCS市場では、これまでベンダー同士の買収や合併は何度もあったが、今回のような売却劇は初めて。最古参のベンダーがこうなったことは残念だが、ソフトウエア業界全体を見渡せば決して稀な出来事ではないので、ユーザー側も冷静な対処が必要だろう。まずは、事業継続へ向けてのベクター社側の施策が注目される。