米セールスフォース・ドットコム:ジム・スティール社長

オンデマンド世界のマイクロソフトを目指す、ライバル各社の追撃をバッサリ切り捨て

 2006.10.11−米セールスフォース・ドットコムのジム・スティール社長が来日し、記者会見した。同社は、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)機能をオンデマンドで提供する“SaaS”(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)分野の大手ベンダーで、最近になってSAPやオラクル、マイクロソフトなどのライバルが相次いでオンデマンドサービス事業に乗り出すなど、激しく追撃される立場にある。しかし、スティール社長は余裕でこれらの挑戦を受け止める構えだ。

 スティール社長は自社のサービスを「コンシューマー向けのウェブ技術をビジネスアプリケーションに持ち込んだもの」と説明する。「Google、Yahoo!、amazonドットコム、iTunesストア、eBayなどは私たちの生活のスタイルを変えたが、これらを利用するためにわざわざ講習を受けに行ったなどという話しは聞いたことがない。コンシューマーウェブの技術はだれにでも使えることが特徴。それに対し、ビジネスソフトは難しく、使うためにトレーニングを受ける必要がある。この状況を“ビジネスウェブ”によって変えたいと思った」

 同社では、サービスのプラットホームをオープンにすることで、世界中の開発者や独立系ベンダーが自分たちのサービスを自由に提供できる「AppExchange」を推進。今年から開始したが、すでに300種類を超えるアプリケーション(日本語版は48種類)が登録されており、1万2,500以上のインストール実績があるという。また、オープンな開発環境を利用してユーザー自身が作成したアプリケーションも4万3,000種類が利用されている。

 「プラットホームとアプリケーションを提供しながら、パートナーと共存・繁栄できるエコシステムを築き上げるという意味で、われわれはオンデマンド世界のマイクロソフトになることを目指している。そして、それを阻むものは何もないと思っている」と胸を張る。

 ただ、ここへ来て、強力なライバルたちが同社を激しく追撃していることも事実。ところが、「SaaSはパッケージソフトとは事業の考え方が全く異なる。それを理解しないと、成功することはできないだろう。例えば、シーベルはわれわれをつぶすために3年前にアップショット社を買収してオンデマンドに乗り出したが、結局は自分たちがオラクルに身売りする羽目になってしまった。SAPもそうだが、彼らはパッケージの方を売りたくて、最後の提案としてオンデマンドもありますよという意識だ。これでは成功しない」と手厳しい。

 「また、ユーザーは小さく入れてビジネス拡大とともに成長させていきたいのに、SAPは最初から100ユーザー以上でないと売らないという立場だ。マイクロソフトも先日、マイクロソフトダイナミクス LiveCRMを発表したが、サービス開始は1年半もあとだという。ウェブの世界は今日が勝負。ズレているとしか言いようがない。マイクロソフトは市場をフリーズさせたいだけだろう。競合各社はすべてやり方が間違っているのでまったく恐くない」とバッサリ。

 一方、SaaSの将来性については、「すべてのソフトはオンデマンドで提供することが可能。普及は優先順位の問題だろう。CRMやSFA(セールスフォースオートメーション)は、パッケージ版の導入が失敗してユーザーが困っていたところだったのでうまくはまった。ERP(エンタープライズリソースマネジメント)に関しては、パッケージがすでに広く導入され、きちんと稼働しているケースが多いので、オンデマンドへの移行は少し時間がかかると思う」との見方を示した。