富士通が分子モデリングシステムを刷新

新名称を採用、正式な後継製品としてさらなる発展へ

 2007.03.15−富士通は、分子モデリングシステムの製品ラインを一新し、新たに「Scigress Explorer」(サイグレスエクスプローラー)の名称で3月から販売を開始した。2000年4月に英オックスフォードモレキュラーグループ(OMG)から買収し、以後は独自でバージョンアップを続けてきていた「CACheファミリー」をベースにしたもの。低分子からたん白質までの幅広い系を対象とし、多種類の計算化学手法を適用して分子設計を行うことができる。全部で6種類のエディションを用意しており、フルセットのウルトラ版が280万円(教育機関は80万円)。

 旧CACheは、もともと計測器大手の米テクトロニクスが社内向けに開発したシステムで、当初はトナーの開発などに用いられたとされる。国内でも1991年から販売されており、コンピューターケミストリーシステム(CCS)市場では非常に知名度が高い。

 今回のリニューアルは、正式な後継製品としてさらなる発展を目指したもの。同社は輸入システムを含めて広範なCCS製品を取りそろえているが、なかでも自社開発製品をナノ材料設計支援システム「マテリアルズエクスプローラー」、有機合成経路設計支援システム「SynthPathエクスプローラー」と名付けているため、製品名に統一感を持たせたいという含みもあるようだ。

 Scigressエクスプローラーは、現時点ではシステムの中味は旧CACheとほぼ同一。使いやすい分子モデリング環境に加え、計算化学プログラムとして分子力学法/分子動力学法のMM2/MM3、半経験的分子軌道法のMOPAC、密度汎関数法のDGauss、配座探索のCONFLEXを内蔵。計算によって、分子の最安定構造、遷移状態、反応座標解析、紫外/赤外スペクトル予測などを行うことができる。化学スプレッドシート機能も備え、構造活性相関(QSAR)、構造物性相関(QSPR)解析を実行し、未知化合物の特性を予測することも可能となっている。

 製品構成もCACheに準じているが、新旧の対応を別表にまとめた。また、旧CACheには創薬支援機能を集めてパッケージ化した「BioMedCAChe」のシリーズがあったが、これらも4月以降にScigressエクスプローラーの製品体系に組み入れていく予定。

新旧製品の対応表

資料:富士通

旧名称 新名称 価格(一般) 価格(教育)
Personal CAChe Scigress Explorer Entry \700,000 \200,000
Quantum CAChe Scigress Explorer Standard \1,400,000 \400,000
Ab initio CAChe Scigress Explorer DFT \2,100,000 \600,000
配座探索CAChe Scigress Explorer 配座探索 \1,200,000 \350,000
CAChe Worksystem Scigress Explorer Professional \2,100,000 \600,000
CAChe Worksystem Pro Scigress Explorer Ultra \2,800,000 \800,000