日本HP−アドバンスソフト−SCSがナノ材料シミュレーションで提携

3社共同で一貫ソリューション、HPハードへの最適化で速度倍増

 2007.07.03−日本ヒューレット・パッカード(日本HP)とアドバンスソフト、住商情報システム(SCS)の3社は、ナノテクノロジー研究を加速させる材料シミュレーション市場で提携し、共同でのトータルソリューションを開発した。きょう3日から提供を開始する。東京大学生産技術研究所を中心とした文部科学省プロジェクトで開発された国産シミュレーションソフトをHP社のPCクラスターに移植・最適化したシステムで、同等の構成のクラスターに対して最大1.8倍の性能を引き出すことに成功したもの。エレクトロニクスや環境、エネルギー、医療分野などナノテク材料研究を推進する全産業に向けて、積極的に提案活動を進めていく。

 今回の共同ソリューションは、日本HPのハード、アドバンスソフトのアプリケーション、SCSのサポート−といったかたちでそれぞれに製品やサービスを持ち寄って実現した。

 中心になるアプリケーションは、アドバンスソフトが提供している「Advance/PHASE」。文科省プロジェクト「革新シミュレーションソフトウエア」(RSS21)を通して開発されているもので、擬ポテンシャルと密度汎関数法を用いた第一原理計算によってナノスケールの物理現象解析を可能にするシステムとして、すでに多くの販売実績を持っている。

 高速処理が求められるため、これまでもPCクラスター環境で利用されることが多かったが、今回は日本HPの「XCクラスター」に最適化することでさらに強力なシステムを実現させた。具体的には、HPが提供している並列処理ライブラリー“HP-MPI”を全面的に採用し、ソースコードレベルのチューニングも実施した。実際のベンチマークでは、最適化していない通常版のPHASEと比べて、バナジウム酸化物の計算(4並列)で88%の高速化、アルミニウム窒化物の計算では4並列で通常版の8並列相当のスピードを達成、水分子の振動解析では8並列で通常版の16並列の9割に相当する性能を実現したという。(写真参照)

 このため、同じ性能ならより小さい構成で、あるいは同じ価格なら約2倍の性能と、導入に際してのユーザーの選択肢が広がることになる。XCクラスターはブレード型の構成も可能で、その場合は独自の“HPサーマルロジック”により、電力コストをラックマウント型の33%、空調コストを70%削減することが可能。高速で運用コストの低いシミュレーション環境を構築できる。

 一方、SCSは、日本HPとHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)分野で戦略提携を結んでおり、5月末には動作検証などに利用できる「HPCソリューションセンター」を開設している。今回の共同ソリューションでは、SCSがワンストップで基本的に販売を担当するとともに、1次サポート窓口となって保守サービスを提供していく。価格は推奨構成で約1,400万円。

 販売対象は、先端の研究を行っている大学・研究所、半導体デバイス分野、バイオセンサーや医療材料などのライフサイエンス分野、燃料電池などの環境・エネルギー分野、機能材料・ナノ素材の応用開発を進める物質・材料分野など、幅広い領域を狙う。3社では、将来的に大きな市場を期待しているが、初年度としては10システムほどの受注を見込んでいる。