日本オラクルが次世代DB製品「11g」を発売

運用管理コスト大幅削減を実現、480以上の新機能搭載

 2007.09.05−日本オラクルは3日、データベース(DB)管理ソフトの最新版「オラクルデータベース11g」を10月23日から順次発売すると発表した。1,500万時間のテストを含むのべ3万6,000人月の開発工数をかけて製品化したもので、現行の10gに対して480以上の新機能を搭載している。とくに、システム運用管理にかかるコストを削減するための機能が多く装備されたことが特徴。「運用管理で浮いたコストを、企業の競争力を高めるための戦略的なIT投資に振り向けてほしい」(新宅正明社長)という。同社にとっても、今後5年間の基盤となる製品で、DB市場全体のパイを広げる起爆剤として大きな期待をかけている。

 オラクルデータベース11gの開発に当たっては、国内を含む顧客からの要望を最大限に取り入れた。非常に多くの新機能が搭載されたが、とくに注目されるのはITコストの増加を抑制するという目標が達成されていること。

 まずは、運用管理コストの多くを占めているシステム変更時のテストにかかわる費用。激変するビジネス環境に合わせてシステム側も柔軟に変化することが求められているが、実際にはテストが不十分なために、かえってシステム障害を引き起こす例も散見される。このときに役立つのが新機能の“オラクルリアルアプリケーションテスティング”。

 これは、稼働中の本番環境で発生したワークロードをまるごとキャプチャーし、テスト環境に持ち込むという「画期的な新機能」(三澤智光常務執行役員)。DBやOSのアップグレード、ハードウエアなどのシステム変更を行う場合に、テストのために準備するワークロード作成の工数を劇的に削減することが可能。通常では4ヵ月程度かかる作業が、わずか2日間で完了するという。しかも、人工的なテストシナリオではなく、本番環境と同じワークロードでテストできるというメリットがある。

 ディザスターリカバリーのための環境を有している場合は、“オラクルデータガード”を利用したスナップショットスタンバイ機能により、災害発生時に備えて待機しているDBを一時的にテスト用に使用することが可能になる。このため、テスト環境をわざわざ用意する必要がなくなり、全体としてテストのためのコストを大幅に減少させることにつながる。

 一方、データ量の爆発的な増加は、運用面でストレージに関係するコストを押し上げている。これに対する解答がDBを利用した情報ライフサイクル管理(ILM)の実現。ストレージベンダーが提供するILMがファイル単位の管理にとどまっているのに対し、今回の11gによるILMはデータ単位でのライフサイクル管理を可能にする。通常のILMは、ファイルの利用頻度によってストレージ装置を使い分けるが、11gのILMはパーティショニング機能を利用して時系列でテーブルを分割し、新しいデータを高性能のストレージに、古いデータはアーカイブ型のストレージに格納するなどの柔軟な運用を行う。

 時系列データの管理を自動化する“インターバルパーティション”、親子テーブルを自動で切り分ける“リファレンスパーティション”、さまざまな組み合わせのパーティション構成を行う“コンポジットパーティション”など、高度な自動化がなされているため、ILMのためのデータの切り分けを人手で設計運用する必要はない。

 また、“オラクルアドバンスドコンプレッション”により、高効率なデータ圧縮が可能。11gで機能強化されたため、データウェアハウス系だけでなくトランザクション系のテーブルの圧縮にも対応可能になったほか、非構造化データを含めて11gがサポートするすべてのデータタイプを平均2−3倍の圧縮率で格納できる。

 同社では、国内に設置した世界最大の「オラクルグリッドセンター」を通して、発売に向けてパートナー各社との共同検証をスタート。10月までにパートナーの3,000人の技術者に対して無償トレーニングを実施し、スムーズな立ち上げを図っていく。新バージョンへの切り替えペースとして、以前の10gは発売1年後に30%の出荷構成比だったが、今回の11gでは1年後に構成比50%を目指す。

 なお、ライセンス価格は、エンタープライズエディションが1指名ユーザー当たり10万円(最少25ユーザー)、1プロセッサー当たり500万円。Linux版を皮切りに、ソラリス、Windows、HP-UX、AIX版も合わせ、年内に順次出荷していく。