アクセルリスがパイプラインパイロットを教育機関に無償公開

コンポーネントコレクションも一部無償、大学などのノウハウ取り込みへ

 2007.12.21−アクセルリスは、コンピューターケミストリーシステム(CCS)関連の各種処理の手順をパイプラインのようにつないでワークフロー化するミドルウエア製品「パイプラインパイロット」(PP)の無償版を開発し、スチューデントエディションとして教育機関向けに公開した。スタンドアロン使用に限られるなど、若干の機能制限はあるが、製品版と同等の使い方が可能。PPは、30社以上がISV(独立系ソフトベンダー)としてコンポーネントなどを提供しているが、今回の無償版を用意したことによって大学などのノウハウをPPのプラットホーム上に取り込む狙いがあるものとみられる。

 PPは、もともと米サイテジック社によって開発されたツールで、さまざまな機能を持つコンポーネントのアイコンを画面上で結び合わせたり分岐させたりすることによって、処理のフロー(プロトコル)を記述することができる。一連の処理を条件に沿って自動実行させることが可能。データベース処理やシステム統合に利用できるため、アクセルリス製品の中にミドルウエアとして組み込まれており、製品アーキテクチャーにおける共通プラットホームの役割も果たしている。

 今回のスチューデントエディションは、学生だけでなく大学など(学位認定機関に限られる)の教職員が使用することも可能。基本的なコンポーネントとして、統計解析、データおよびプログラムの統合、HTMLあるいはPDFによるレポート出力のために必要なコンポーネントコレクションがそろっているほか、ケミストリーコレクション(低分子化合物の構造情報を取り扱うことにより、プロパティ値の計算、フィルタリング、各種操作を行う)、配列解析コレクション(バイオインフォマティクスで必要とされる主要なツール群をカバーし、配列解析のワークフローを構築する)、遺伝子発現コレクション(遺伝子発現解析実験のデータ処理、解析を行う)のうちの1つを選択して利用できる。

 残りの2つも利用したい場合はそれぞれ有償となる。また、モデリングコレクション(非常に大規模なデータに対応した学習やデータのモデル化、統計的手法によるフィルタリング、クラスタリングなどを行うツール)、テキスト解析コレクション(文献検索およびテキストマイニング、テキストアノテーション、トレンドや相関解析のほか、各種のテキスト解析のためのツール)、ADME(吸収・分布・代謝・排出)/毒性コレクション(ライブラリーに含まれる化合物に対し、薬物体内動態を予測するためのツール)も有償で追加導入することができる。

 PPでは、自分の発想やアルゴリズムを組み込んで独自のコンポーネントを作成したりワークフロー(プロトコル)を組み立てたりすることが可能。それらを研究グループの間で共有することもできる。アカデミックの世界に無償で広めることにより、CCS分野での標準プラットホームとしての地位を高めるとともに、大学で開発されたコンポーネントなどが商用版のユーザーにも公開されるようになれば、PPの価値がさらに大きく向上すると期待されるだろう。

 なお、スチューデントエディションの入手方法は、アクセルリスのサイト(http://accelrys.co.jp/products/scitegic/pp-student.html)を参照のこと。