富士通が材料系CCS製品の統合プラットホーム計画

新名称「SCIGRESS」を採用、インターフェース公開で柔軟な発展性実現

 2007.11.06−富士通は、化学・材料研究のための統合コンピューターケミストリーシステム(CCS)の体系を一新し、新たな統合プラットホーム製品「SCIGRESS」(サイグレス)を来年6月にリリースする。MaterialsExplorer(マテリアルエクスプローラー)、ScigressExplorer(サイグレスエクスプローラー)、MOPACなどの既存製品の機能を移行しつつ、コアとなるアーキテクチャーを新しくすることにより、外部の計算エンジンなどを柔軟に取り込んで幅広いアプリケーションに対応できるようにする。新たに、文部科学省プロジェクト「革新的シミュレーションソフトウエアの研究開発」(RSS21)で開発中の第一原理擬ポテンシャル密度汎関数法ソフト「PHASE」を独自に商用化して提供するほか、菱化システムとの協業に基づいて「ADF」もシームレスに利用可能となる。

 今回の新プラットホーム「SCIGRESS」は、10月24日にユーザー会の位置づけで開催された「富士通計算化学セミナー2007」で明らかにされたもの。古典力学から第一原理計算までのマルチスケール対応、並列計算の強化など、より大規模な系を高速・高精度に解析するとともに、外部プログラムとの連携による発展性、使いやすいユーザーインターフェースを実現することを目的としている。

 新開発するコア部分(基本コンポーネント)を共通プラットホームとし、既存製品の機能を統合していくとともに、コアに接続するためのインターフェースを公開して、他社製品や大学などの先端プログラム、ユーザー開発プログラムなどを柔軟に取り込めるようにする。具体的には、自社開発の既存製品である分子動力学法ベースの「MaterialsExplorer」、旧CACheファミリーをベースにした統合モデリングソフト「ScigressExplorer」、半経験的分子軌道法ソフトの「MOPAC」および励起状態を計算できる「MOS-F」を統合する。

 新プラットホーム「SCIGRESS」はこれらの統合製品の総称であり、ここに文科省プロジェクト「RSS21」で開発された「PHASE」の商用版(富士通が独自で強化していく意向を表明)と、菱化システムが国内販売権を持つ蘭サイエンティフィックコンピューティング&モデリングの密度汎関数法ソフト「ADF」(インターフェースを富士通が開発し、菱化システムはエンジンのみ提供)も組み入れる。動作環境は、Windowsデスクトップのほか、Linux(レッドハットおよびSUSE)に対応させる。

 現時点の開発スケジュールでは、来年6月のSCIGRESSバージョン1のリリース時に、現在のScigressExplorerのエンジン群(MM、MD、拡張ヒュッケル、ZINDO、QSAR、MOPAC、MOS-F、CONFLEX)を含めた全機能を移植、さらにMaterialsExplorerの分子動力学(MD)エンジンを搭載する。この際、「MOPAC2006」として提供されているMOPACとMOS-Fは、名称を「SCIGRESS/MO」に変更することになり、並列処理対応などの強化が図られる。さらに、PHASE(富士通版のSCIGRESS/PHASE)とADFもこのタイミングで用意される予定。

 その1年後の2009年6月リリースのSCIGRESSバージョン2では、MaterialsExplorerの全機能の移行を完了させるとともに、旧CACheファミリーのライフサイエンス系機能の連携可能な部分を統合することにしている。

 なお、既存製品からの移行についてだが、ScigressExplorerは2009年3月、MaterialsExplorerは2010年3月に販売終了としたい考え(サポートはそれぞれの販売終了後から2年間継続)であり、それまでに移行を促したいという。

 新しいSCIGRESSの製品構成はコアモジュールを基盤に、ScigressExplorer相当の機能を集めた“ケミカルパッケージ”、MaterialsExplorer相当の機能を集めた“マテリアルパッケージ”、さらに各パッケージに標準で含まれない計算エンジンに対する追加ライセンスから構成される。このため、保守契約済みの既存製品ユーザーは、優待アップグレードを可能とし、コアモジュールの価格分だけで移行できるようにする。コアモジュールの価格は未定だが、企業向け100万円、教育機関向け50万円程度の水準を予定しているということだ。

 なお、Windowsデスクトップ環境で手軽にMOPACを利用できる「WinMOPAC」についてだが、こちらは引き続きグラフィック機能付きのWindows専用スタンドアロンパッケージとして開発・販売を継続する。ただし、計算エンジンの中味はSCIGRESS/MO相当となり、商品名も変わる。正式名称はまだ決まっていないが、「WIMO」とする案が出ているようだ。