菱化システムが半経験的分子軌道法「MOPAC2007」を正式発売

企業および官公庁向け、新たにPM6法搭載で高精度実現

 2007.11.30−菱化システムは、半経験的分子軌道法ソフト「MOPAC2007」の販売権を取得し、このほど正式に国内で販売・サポートを開始した。米スチュワート・コンピューテーショナル・ケミストリーが開発したもので、菱化システムは海外における最初の代理店ということになるようだ。ただ、開発元は大学などの教育機関に対しては製品を無償で提供しており、販売は民間企業および官公庁向けが対象となる。WindowsまたはLinuxで動作し、価格は企業向けで62万6,250円から。

 MOPAC2007は、開発者であるJ・P・スチュワート博士が富士通との契約を解消したのちに独自に作成してきた新バージョンで、「OpenMOPAC 7.2」と呼ばれてきたもの。実際には今年の1月から正式版が公開されていた。

 MOPACは、バージョン6まではパブリックドメインのフリーソフトとして配布されていたが、1991年8月に富士通がスチュワート博士と契約(契約内容は定かではないが、研究に対する資金援助とされる。のちに専属のコンサルタント契約に移行)を結んだのち、1993年にバージョン7(パブリックドメイン版の立場を継続)と、富士通の著作権が含まれた「MOPAC93」の2バージョンに分かれた。その後、MOPAC97、MOPAC2000、MOPAC2002、MOPAC2006とバージョンアップされ、富士通が商品化と独占頒布権を所持する時代が長く続いた。

 この富士通との契約は昨年までには解消されていたようで、スチュワート博士は独自バージョンのMOPACの開発に入っていた。開発コードを冠した専門サイト(http://openmopac.net)も運営されている。

 さて、今回のMOPAC2007だが、最後のパブリックドメイン版であるバージョン7.1をベースに、富士通の著作物を含まないかたちで書き換えられたプログラムとなるようだ。半経験的方法に基づく量子化学計算ソフトで、シュレーディンガー方程式を解くことで分子軌道や生成熱、分子構造に関するエネルギー微分値を計算し、その結果から振動スペクトルや熱力学量、同位体効果、力の定数などを計算することができる。

 とくに、今回の最新版では、新しくPM6法が組み込まれており、幅広い遷移金属錯体の構造最適化が可能になった。PM6のパラメーター開発のために、9,000以上の化合物の実験や非経験的分子軌道計算結果が利用されており、非常に高い精度を実現している。生成熱や構造、水素結合などが正しく求められるため、QSAR(構造活性相関)などを行う際の基本データとしても有効だという。

 プログラムはWindowsとLinuxで動作するが、エンジン部分だけの計算ソルバーであり、菱化システムでは加CCGの「MOE」をGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)として組み合わせる使い方を推奨していく。そのほかでは、ケンブリッジソフトの「Chem3D」がGUIになるほか、フリーで入手できるものもいくつかあるようだ。

 企業および官公庁向けのコマーシャルライセンスは、永久ライセンスと年間サイトライセンスに分かれている。永久ライセンスは、1CPUで企業向け65万6,250円、官公庁向け32万8,125円、5CPUで企業向け131万2,500円、官公庁向け65万6,250円。年間サイトライセンスは、企業向け131万2,500円、官公庁向け65万6,250円。