米CASがSciFinderのエンタープライズ契約を国内でも提供
年間定額で全研究員がフルに利用可能、すでに製薬2社と締結
2008.03.20−米国化学会(ACS)のデータベースサービス部門であるケミカルアブストラクツサービス(CAS)は、オンライン検索サービス「SciFinder」の新しいエンタープライズ契約方式を日本市場へ導入し、国内の最初のユーザーとしてエーザイおよび大日本住友製薬との間で同契約を締結したと発表した。年間定額式のライセンスで、企業内のすべての研究員が無制限にSciFinderを活用することができる。数百人規模の利用者が想定される場合にメリットが大きいという。国内では、化学情報協会(JAICI)がこの事業を担当する。
今回のエンタープライズ契約は、メガファーマを中心とした大口利用者(ユーザー数が数千人規模)向けに設けた契約方式で、欧米では1−2年前から適用されている。JAICIが国内でも利用できるようにCAS側と交渉してきた結果、数百人規模のミドルレンジの企業にまで対象を広げることになり、昨年12月から正式に国内で紹介をはじめていた。
従来のSciFinderの契約方式は、ID数を固定した指名ユーザー制の「定額契約」と、あらかじめ検索回数などを定めたプリペイド式(ID数は制限なし)の従量制「タスクパッケージ契約」の2つに分かれていた。定額契約は、最低限の20ユーザーでも料金は2,000万円近いため、やや敷居が高い。プリペイド式は100万円からと契約しやすいが、定額契約と比べて部分構造検索ができないなど機能に制限があるほか、従量制のために利用者が使いすぎを気兼ねする場合もあった。このため、ヘビーユーザーには定額制、ライトユーザーに従量制と組み合わせて契約する企業もあるが、研究員の間に不公平感が残るという問題も指摘されていたという。
これに対し、今回のエンタープライズ契約は、すべての研究員が制限なく使用でき、IDの追加発行も自由。SciFinderをフル活用することで、研究のスピードや質が向上する効果が期待できる。また、国内の化学系の学生は、大学時代に「SciFinder Scholar」で制限なくCASデータベースを利用してきたケースがほとんどであるため、就職後も自由に使える環境を用意することは、企業にとっても優秀な研究員の確保という観点で効果的なアピールにつながるのではともしている。
さらに、年間定額制なので予算化しやすいという管理上のメリットもある。加えて、通常のSciFinderは専用のクライアントソフトを用いて操作するが、同契約のユーザーに限って今年2月に新リリースされたウェブ版クライアントを使用することが可能。利用者のパソコンにソフトをインストールするなどの手間がなくなるため、管理コスト削減にも役立つ。
具体的な契約料に関しては、企業の研究規模や過去の利用実績に基づいて、CAS側で個別見積もりを出すかたちになる。JAICIでは、まずはヘビーユーザーの多い製薬企業に契約を呼びかけるが、化学系・材料系の企業にも積極的に提案活動を行っていく。