国立高等専門学校機構とマイクロソフトがグリッドプロジェクト始動

全国55校のPCクラスターを接続、教育と研究の両面で活用へ

 2008.3.26−国立高等専門学校機構とマイクロソフトは25日、全国55校の国立高等専門学校(高専)が保有する教育用パソコンをネットワーク接続し、高速な計算環境を教育や研究に活用することを目指す「高専連携グリッドプロジェクト」を4月から本格的にスタートさせると発表した。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)専用OSであるWindowsコンピュートクラスターサーバー2003(WindowsCCS 2003)を採用し、最終的に6,500台のパソコンを結ぶ計画。ノード数では国内最大級のHPCシステムを目指すという。

 高専は、中学卒業後から高度な技術専門教育を5年間の一貫教育として行う学校で、生徒数は全国に5万人。2004年の独立行政法人化を機に、国立高等専門学校機構のもとに全国55校がひとつにまとまった。

 今回のプロジェクトも、単一組織となったことで現実味を帯びたもの。各高専がそれぞれに学内でグリッドを構築し、それを相互接続することで各校をまたいだ大規模グリッド環境を実現する。情報処理演習用に導入されているパソコンを中心に、夜間や休日などの遊休時間も活用してPCクラスターの構築を進めていく。最終的なノード数は、トータル6,500台を予定している。

 とくに、教育と研究の両面で活用を図ることがポイント。全国のパソコンの空き時間を利用して大規模な科学技術計算を短時間に完了させることができるため、先進的な研究に結びつくと期待される。また、生徒たちも早いうちからHPC環境を体験することで、高度情報技術への対応能力が磨かれることになる。

 マイクロソフトは、このプロジェクトに対してWindowsCCSのライセンスを提供するとともに、各高専および高専機構と連携して、アプリケーションの動作検証、評価、導入支援などを行う。

 なお、PCクラスターのためのOSとして、LinuxではなくWindowsCCSを選択した理由として、岐阜高専の柴田良一先生は、「PCクラスターそのものを研究するとか、グリッドを構築すること自体が目的だったら、実績もあるLinuxでかまわなかったが、今回は教育に使用することが狙いであり、構築に時間をかけたくなかった。そのために、WindowsCCSに決定した」と説明した。

高専連携プロジェクトの経緯と計画

記者会見資料より

前段階 2005年に岐阜高専が地域の13組織・1300台のパソコンを結合した岐阜グリッドプロジェクトに成功
準備段階 全国55高専が1つになった高専機構は法人単位で巨大な組織であり、スケールメリットを生かす唯一の存在である
2006年度 高専機構とプロジェクトの推進を計画する。参加希望は、岐阜、徳山、豊田、詫間、鈴鹿、福島、八代、一関の8校
2007年度 システムの検討作業を進め、WindowsCCSを採用。その後、高知、長岡の希望を受け、先行検証を岐阜、徳山、豊田で実施
2008年度 WindowsCCSによるクラスター構築技術を共有し、全国高専の中で25拠点のCCSクラスターを構築する
2009年度 情報処理センター単位の大規模クラスターも構築し、広域ネットワークで結合して、高専連携グリッドを実現する
展望 全国高専が1つのグリッドを構成し、スケールメリットを生かした数千台レベルの大規模グリッドの実現を目指す