2008年春CCS特集:ナノシミュレーション

高分子溶液状態のMD計算に挑戦、混合系・多成分系に対応も

 2008.08.30−ナノシミュレーションは、独自のノウハウで分子動力学法(MD)のアプリケーションに取り組むベンダーで、技術力をコアにしたサービスが特徴。独自開発のNDエンジン「NanoBox」を製品化しているが、ソフトだけを販売するケースは少なく、コンサルティングを組み合わせて具体的な研究テーマに挑戦するスタイルが中心になっている。

 同社は、液晶や合成高分子を対象にしたMD計算を長年にわたって実施してきた。高分子の場合、以前はガラス転移温度や粘度など、成形性に関係するような材料物性を計算で予測したいというニーズが多かったが、こういったテーマは現在では原子レベルのMDではなく粗視化MDで扱われることが増えている。原子レベルのMDでは、高分子の溶液状態などの計算が注目を集めているということだ。

 また、粗視化MD計算で必要になる“カイ・パラメーター”を原子レベルMDで求めることが可能であり、同社では今年から来年にかけてのメインテーマとしてこれに取り組みたいとしている。カイ・パラメーターを実験で得ることはたいへんだとされているため、MDで算出できれば高分子シミュレーションが大きく進展すると期待される。

 一方、独自エンジンであるNanoBoxの特徴として、混合系・多成分系に対応できることを強調していく作戦。いくつかの成分が混ざり合った状態で、それぞれの化学ポテンシャルを計算することができる。相溶性の高い化学構造の探索などに有効。基本的に、実験では得られにくい物理量を計算することをポイントにしていきたいという。