マイクロソフトが外来語カタカナ用語末尾の長音表記ルールを変更
“プリンター”など長音を表記、一般ユーザーの違和感解消へ
2008.07.29−マイクロソフトは25日、外来語カタカナ表記の末尾の長音表記を変更すると発表した。「コンピュータ」や「プリンタ」など、いわゆる理工系的な表記だったものを、「コンピューター」や「プリンター」のように長音を表記したものに改める。すべての製品・サービスのそれぞれ次期バージョンからこのルールを採用し、関連するマニュアルやヘルプ、ウェブドキュメントなどのすべての表記を変更する。ただし、現在および過去のドキュメントにまでは手をつけない。同社では、自然な表記・自然な発音に基づく変更として、ユーザーのメリットになると説明している。
外来語カタカナ用語の末尾の表記については、JIS規格を記述する際のガイドラインとして、「2音の用語は長音符号を付け、3音以上の用語の場合は長音符号を省くことを原則とする」とされており、これが“学術・JIS記述ルール”として自然科学/工学系、および学術論文の分野でスタンダードとなっている。これに対し、国語審議会の報告をもとに、1991年6月に内閣告示第2号として、「用語の末尾が -er、 -or、 -arなどで終わる場合には長音表記を付けることを推奨する」とされる“内閣告示ルール”も存在している。
コンピューターの世界では、学術・JIS記述ルールに従い、長音表記を省くことが行われてきた。これには、コンピューターが理工系の世界のものだからという理由だけでなく、技術的な制約の問題もあったという。
すなわち、メモリーの節約である。少し前までは、メモリーが高価だったため、1バイトでもムダを削るために長音符号を扱わないことにした。また、画面の解像度も低かったため、ムダな文字を表示して画面を狭くしたくないという考え方があった。
実際、マイクロソフトにおいても、GUI画面に表示する文字は、Windows95時代まではカタカナを半角文字で表示していた。このために、ファイル名やフォルダー名に半角カタカナを使用するユーザーが多くなり、UNIXなどの他のプラットホームとの互換性の問題なども生じたという。Windows98およびWindowsNT4.0以降になって「MS UIゴシック」フォントが開発(カタカナ文字の幅が狭いため全角でもスペースを取らない)され、全角カタカナで表示することが標準となった。ちなみにWindowsVistaではGUIのフォントは「メイリオ」に変わっている。
今回の長音表記の変更は、こうした技術上の制約がなくなったことに加え、コンピューターが大衆化したことで、理工系の表記法に対する一般ユーザーの違和感が増大していることが、大きな理由だとしている。アクセシビリティ向上の観点からも、読み上げソフトが自然な発音で動作できるようになるなどのメリットがある。
新しい表記になるのは次のバージョンの製品からであり、サービスパックなどのアップデートは除外される。このため、OSとしてのVistaのマニュアルやヘルプは現行表記のままになるが、Vista上のアプリケーションで新バージョンが出ると、それに関するヘルプなどは新ルールでの表記となる。このため、当分は2つの表記が混在することになりそうだ。