サイバネットシステムが加シムバイオシスと販売代理店契約締結

ドッキング・de Novoなどユニークな製品群、創薬研究支援ツール発売

 2008.10.30−サイバネットシステムは、加シミュレーテッドバイオモレキュラーシステムズ(略称・SimBioSys=シムバイオシス、ピーター・ジョンソン会長)と国内における販売代理店契約を締結し、創薬支援のためのソフトウエア製品群の販売を開始した。標的たん白質と薬物候補化合物とのドッキングシミュレーション、たん白質の立体構造に基づいて薬物分子構造を創出するde Novo(デノボ)デザイン、知識ベースに基づく合成経路設計など、ユニークなソフトが揃っている。同社のコンピューターケミストリーシステム(CCS)事業の主力製品に位置づけて拡販を図る。

 シムバイオシスは、英リーズ大学から独立するかたちで1996年に設立された。ジョンソン会長は現在もリーズ大学の現役教授だが、ソフトウエアの開発はシムバイオシスが主体となって行っている。欧米の製薬企業を中心に150以上のユーザーを擁しているが、日本市場への進出は今回が初めて。

 シムバイオシス製品は、大きくドッキングシミュレーション、de Novoデザイン、合成経路設計−の3分野に分かれる。

 なかでも、主力製品はドッキングシミュレーションソフトの「eHiTS」。リガンドをフラグメント分割し、正しいポーズを網羅的に発生させることで高いドッキング精度を実現している。とくに、スコア関数を70以上のたん白質ファミリーに合わせてチューニングしているため、標的たん白質にマッチしたスコアで順位づけすることが可能。スコアを学習させて、さらに高いスクリーニング効果を得ることもできる。

 網羅性と同時に計算速度の速さも特徴となっているが、1次スクリーニングツールとして用意された「LASSO」を利用することにより、さらに効率的な運用が可能。QSARディスクリプターをベースに分子表面の特性を用いて高速なふるい分けを行う。その速度は、毎分100万化合物。

 ただ、eHiTS自体の処理の高速化も考慮されており、スーパーコンピューター級の性能を持つメニーコアプロセッサーである「Cell Broadband Engine」(Cell B.E.)に対応している。このため、ゲーム機のPLAYSTATION 3(PS3)でドッキングエンジンを動作させることができるという。その場合、PS3にLinuxを搭載する必要があるが、こうしたPS3の利用も正式なサポート対象となるようだ。

 一方、de Novoデザインツールの「SPROUT」は、リーズ大学で開発されていたころからの18年を超える歴史を持ち、HIVプロテアーゼ阻害剤や抗マラリア剤などの成功事例があるという。使いやすいGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を備えているほか、オプションの「SPROUT LeadOpt」を用いることで設計した骨格の置換や部分構造付加などの構造最適化を行うこともできる。

 また、得られた構造の合成の容易性を「CAESA」によって評価できるので、合成できない構造が出てくるなどのde Novoデザインの弱点をカバーすることが可能。CAESAは、合成反応の知識ベースや反応ルールと、入手可能な試薬データベースを参照して、合成の妥当性を数値的に評価してくれる。

 3つ目の合成経路設計支援システム「ARChem ルートデザイナー」は、目的化合物の構造を入力すると、その化合物を生成物とする反応経路の一覧をスコア付きで提示する機能を持つ。ウェブベースで使いやすい。合成経路を探る反応ルール(知識ベース)は、反応データベースをもとに自動生成される。国内ユーザーに対しては、アクセルリスの反応データベースをサイバネットシステムから提供できるということだ。

 そのほかの製品では、文献などに記載された構造式をスキャナーで読み取る「CLiDE」がある。構造式を抽出し、MOLファイル形式やChemDraw形式に変換してくれる。反応式や反応情報を認識してデータベースに入力できるようにしたり、Rグループを自動的に抽出したりするなど、化学者向けの多機能なOCRソフトとなっている。

 サイバネットシステムは、今月に米オープンアイとの代理店契約が切れたばかりだが、引き続き創薬支援のためのモデリング製品市場に力を入れていく方針。今後は、シムバイオシス製品を主力に位置づけ、CCS事業をさらに発展させていく。