トムソン・ロイター:デービット・ブラウン上級副社長インタビュー

Thomson Innovation日本語インターフェース版を提供、特許調査の“新標準”

 2008.11.20−トムソン・ロイターのサイエンティフィック部門は、知的財産情報統合ソリューション「Thomson Innovation」(トムソンイノベーション)の日本語インターフェース版を11月4日から正式に提供開始した。特許を中心とした複合的なコンテンツを豊富に関連付けており、その網羅性と正確性によって企業の知的財産戦略推進を強力に支援することができる。「特許調査の新しいスタンダードになる」と自信をみせるデービット・ブラウン上級副社長(David Brown)にサービスの特徴を聞いた。

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 Thomson Innovationは、トムソン・ロイターの誇る特許情報サービス「Derwent World Patents Index」(ダウエントワールドパテントインデックス、DWPI)を中心に、学術文献情報、主要な科学コンファレンス・シンポジウム・セミナーで発表された学術情報、企業や市場などに関するビジネス情報−を網羅した知的財産分野のための統合サービス。単一のプラットホーム上で情報の調査と分析を手軽に行うことができる。

 とくに、DWPIは米国、欧州、日本、アジア特許を含むフルテキスト情報を収録しているだけでなく、トムソン・ロイター独自の分類体系、タイトルと抄録、41の特許発行機関からの情報をすべて英語に翻訳するなどの付加価値を加えている。

 インターネット経由で利用するサービスであり、今回の日本語インターフェース版は画面表示が日本語化されたという意味。コンテンツ自体は英語となる。

 利用は年間契約で、料金は利用したいコンテンツの種類、およびコンテンツへのアクセスレベルの組み合わせによって決まる。

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 − 欧米でのThomson Innovationのサービス開始は昨年の12月です。立ち上がりはいかがですか。

 「普及の点では、契約数は数百ユーザーの実績になってきている。R&D Magazine誌のアワード(今年7月)も受けており、内外から評価が高い。今回、日本語インターフェース版を正式にリリースしたわけだが、すでに日本にもユーザーがいるため、すぐに利用してもらうことが可能。ネット上で日本語と英語の表示を簡単に切り替えることができる」

 − Thomson Innovationの特徴についてあらためて説明してください。

 「大きく3つの特徴がある。まず、競合他社の情報に強くなれるという点だ。競合に関する特許・文献・ビジネス情報を横断的に調査することで、いま自社が何をすべきかがわかってくる。第2は、イノベーションを推進するに当たってのリスクを最小化できることだ。先行技術の有無や発明の特許性を確認できるように、Thomson Innovationは第1級の特許情報を収集し、それを日々拡張している。その点では、とくに韓国および中国の特許データを強化している。今回、日本語インターフェースになったので、日本の顧客が特許調査をしやすくなったと思う」

 「3つ目は、顧客が投資から最大の効果を得られること。企業内の知財を扱う部門間での情報共有が促進されるので、全体としての意思決定がスピードアップする。それに加え、豊富で多彩な情報を視覚化する分析ツールを活用することによって、個人の仕事の生産性も高まる。こうした3つの特徴からして、Thomson Innovationは特許調査の新しいスタンダードとして、広く活用してもらえると信じている」

 − よくわかりました。Thomson Innovationではアジアを重要視しているとのことですが・・・。

 「世界の特許情報という観点で、アジアの重要性が高まっているからだ。とくに最近の韓国と中国の特許出願は非常に高い水準にある。DWPIでもこれをカバーするべく積極的に投資しており、昨年から今年にかけて特許に加えて実用新案の全件収録を開始した。また、すべてのクレーム情報(英訳)を検索・表示することができるようになった。中国のクレーム情報を入れたのは業界初だ。さらに、台湾の書誌・抄録についても強化していきたい」

 − 日本についてはいかがですか。

 「日本の情報として、今年から実用新案をカバーしている。中国や日本の実用新案を入れてほしいというのは、そもそも日本の顧客からの非常に強い要望に対応したものだ。日本語インターフェースを用意したこともそうだが、われわれは日本市場をたいへん重視している」

 − 化学系企業などは、トムソン・ロイターのサービスでは文献情報サービスの方に親しみがあると思います。そうしたユーザーにもThomson Innovationは有用ですか。

 「確かに化学系の人たちは文献を参照することに重きを置いていると思う。ただ、実際には文献よりも先に特許にリファレンスが存在したということも少なくない。その意味で、世界特許と学術文献の両方にアクセスできるThomson Innovationは、まさに次世代のスタンダードなツールになる。これからも利用できるコンテンツを拡充していくし、コンテンツを活用するための機能強化にも力を入れていく」

 − なるほど。ところで、新体制のトムソン・ロイターとなって、サイエンティフィック事業はどう変わりましたか。

 「ロイターと合併したといっても、サイエンティフィック部門の事業の中身は変わらない。ただ、アジアではロイターの知名度は非常に高いので、トムソン・ロイターとしてのブランドの価値はずいぶん向上したと思っている。顧客がどういう情報を望むかによって、将来的にはいろいろなシナジーがあらわれてくるだろう」

 − サイエンティフィック事業の全社的な位置づけはどうなっているのですか。

 「トムソン・ロイターはいくつかの部門で構成されているが、科学技術をテーマにしているだけにグローバル展開が進んでおり、売上の半分以上は北米以外の市場からのものとなっている。全社的にも、成長事業と位置づけられている」

 − わかりました。ありがとうございました。